恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「ぼうっとしてどうした?」

「あの、このあとに何か予定が入っていましたか?」

 どれだけ記憶を手繰ってみても、会食などの予定は思い出せない。副社長自身が、週末は予定を入れないようにと言っていたはずだ。

「予定を入れないようにと言っただろう? まさか忘れたのか?」

「いえ、ですので予定は入れていません」

「ああ、だから行くぞ」

 どうにも会話がズレていて、私の頭の中にはハテナマークが次々と浮かんでいく。予定は入れていないのに、いったいどこへ行くというのだ。

「だから、どこへ⁉」

 一向に会話が平行線のままで、もどかしさに耐えきれず語気が荒くなってしまう。

「まさか、忘れたとは言わせないぞ。恋人……候補だろ?」

「……はぃぃ?」

 忘れたもなにも、あれは冗談だと思っていた。しかも恋人“役”が恋人“候補”に変わっているし、あのとき私ははっきりと断ったはずだ。それなのに、どうしてこんな話になっているのだろう。

「ほら、予約の時間が迫ってる」

「予約?」

「まずは食事をして、お互いのことを知るところから始めよう」
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