恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「ここの鮨が食べたくて、無理を言いました」

「それは光栄でございます。お連れ様もいらっしゃいませ。ご案内いたします」

「よ、よろしくお願いします!」

 今の会話で、ここが鮨屋だと理解した。回転寿司しか知らない私には、あまりにも敷居が高い。

 支配人に案内されて通されたのは、カウンター席の奥にある個室スペースだった。店内のカウンター席はすでに満席で、その人気の高さが窺える。

「お飲み物はいかがいたしましょうか?」

「みのりはどうする?」

「み、みのり⁉」

 突然名前を呼ばれ、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「何を驚いているんだ? それより支配人を待たせている。何がいい?」

「副社長は何にされますか?」

「副社長じゃないだろう? まあ、それは後だな。先にドリンクを決めよう。俺は車だからお茶でいい」

「じゃ、じゃあ私も! 同じものでお願いします」

 副社長がお茶なのに、自分だけアルコールを注文するなんてあり得ない。そんな勇気は私にはなかった。
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