恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「きゃっ……! やめてください」

 強い力でいきなり肩を掴まれ、不快感に思わずその手を振り払う。そして睨みつけるように顔を上げ、貴明を見上げた。

「うわぁ……何? この自意識過剰な女」

 彼女が私を見下ろしながら、心底蔑んだような視線を向けてくる。

「昔はこんな地味な女じゃなくて、もう少し可愛げがあったんだけどな……」

 誰のせいで――と喉まで出かかったが、そんなことを言えば貴明の思うツボになりそうで、その言葉をぐっと飲み込んだ。

 ふと周囲を見渡すと、静かなバーの中で私たちだけが異様に目立っている。好奇の視線がちらほらと向けられているのがわかった。

「あの……もう用がないのでしたら、私に構わないでいただけますか? 周囲の迷惑になりますので」

「なっ! それは俺たちが悪いって言いたいのか?」

「それ以外にありますか?」

 どう考えても、一方的に絡んできたのは彼らの方なのだから。

「ムカつく! 貴明! このまま引き下がっていいの?」

 彼女は苛立ったように声を上げ、貴明の腕にしがみつく。

「お前、俺たちに謝れ」

 貴明は眉を吊り上げ、そんな理不尽なことを言い出した。

「おい!」
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