恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
そこへ――低く落ち着いた、それでいて有無を言わせない威圧感を帯びた声が響いた。

「俺たちの邪魔をするのは誰だ?」

 苛立った様子で、彼らは一斉に背後へ視線を向ける。

「きゃっ……イケメン」

「なっ……!」

 彼女は要さんの姿を目にした瞬間、思わずというように甲高い声を上げた。

 その反応を目の当たりにした貴明は、自分の彼女とは思えない態度に呆然としている。まるで開いた口が塞がらないとは、このことだ。

「私の連れに何かご用でしょうか?」

 要さんは穏やかな口調で問いかける。しかし、その声音の奥には冷たい怒気が滲んでいた。

「つ、連れ? みのりが?」

「みのりだと?」

 丁寧な話し方とは裏腹に、怒りを必死に抑えているのが手に取るようにわかる。ところが空気の読めない貴明は、何も気づかないまま私を馴れ馴れしく呼び捨てにしたのだ。

 その瞬間――要さんの声の温度がさらに下がる。

「要さん、落ち着いて下さい」

「ああ、落ち着いている。ところで、この失礼なやつは一体誰だ?」

 全然落ち着いていない気がするけれど、今それを指摘する勇気はない。

「えっと……元カレ? みたいな……」

 恐る恐る答えた瞬間だった。

 ピキッ――と、本当にそんな音が聞こえた気がするほど、要さんの眉間に深いシワが刻まれる。

「こいつが……」

 低く呟きながら、貴明を頭の先から足の先までじろりと眺めた。

 正直に言ってしまえば、要さんと比べたら貴明は何もかもが見劣りする。容姿も、雰囲気も、立ち居振る舞いも。

 その差は、並んでいるだけで誰の目にも明らかだった。
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