恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 週明け――

 いつも通りの朝――のはずだった。

 ところが、エントランスに一歩足を踏み入れた瞬間から、どこか空気がおかしい。

 四方八方から遠巻きに見られ、指を差されながらヒソヒソと何かを囁かれている。その視線は好意的なものではなく、嫌な予感しかしなかった。

 エレベーターへ向かう背中にも、その視線は容赦なく突き刺さる。私が一体何をしたというのだろうか。

 その理由は、秘書室で判明することになる。

「おはようございます」

「おはようございます。金曜はタイミングが悪くて、すみませんでしたね」

「えっ……?」

 室長から告げられた言葉の意味が、すぐには理解できなかった。

「邪魔をするつもりはなかったんです」

「邪魔って、あっ! 室長は絶好のタイミングでした!」

 あのあと捕獲されたものの、室長のお陰であの場から逃げ出すことができたのは事実だ。もっとも、そのあとに起きたハプニングについては黙っておく。

「ところで、あの日エントランスで絡まれていたとか……?」

「えっ? は、はい……どうして?」
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