恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「まだ私に何かご用でしょうか?」

「なんかよそよそしいなぁ」

(あんたが馴れ馴れしいだけでしょ!)

 そう言い返したい言葉が喉元まで込み上げたが、これ以上この男と関わりたくなくて、私はぐっと飲み込んだ。

「あの、私急いでいるので」

 このあとも来客の予定が入っている。こんな男に構っている暇なんてない。

「ちょ、待てよ。どこへ行くんだ? ここはTOKITOグループの本社だぞ?」

「はぁ……そんなことは知っていますが?」

 相手をしている時間がもったいなくて、私は貴明を振り切るようにエントランスへ足を向けた。

 貴明は眉間にしわを寄せ、訝しげな表情でこちらを見ている。

 けれど、私には関係ない。

 さすがにもう、この男と偶然顔を合わせることはないだろう——そう思っていた。

 ところが——

「よう!」

 終業時間になり、帰宅しようとエントランスを出た瞬間、本日二度目となるその男が、まるで待ち構えていたかのように立っていた。
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