恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「痛いっ……離して。じゃないと人を呼びますよ!」

「だったら俺から逃げるなよ」

 逃げるなと言われたところで、素直に従えるわけがない。私はどうにか拘束から抜け出そうと、必死にもがいた。

「可愛い彼女もいるんだし、今さら私のことなんて相手にする必要ないでしょ?」

「いや、TOKITOの本社で働いているなら話は別だ」

「そんなっ……」

 やはり貴明にとって、私の存在は利用価値があるかどうかでしかないのだ。高校時代は連れて歩くためのステイタスで、今はTOKITOという会社の肩書きが執着の理由になっている。

「で? どこの部署なんだ? 俺にTOKITOのお偉いさんを紹介してくれよ」

「『掃除でもしているんじゃないか』って言っていたのはあなたですよね? そんな私に何を期待しているんですか?」

「俺に憧れてたお前と付き合ってやったんだから、感謝してるだろう?」

 あまりにも身勝手なその発言に、私は言葉を失った。当時の私は、どうしてこんな男に憧れていたのだろう。今となっては不思議で仕方がない。自分の人を見る目のなさが、ひたすら恨めしかった。
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