恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「あの~、そろそろ離してもらえませんか?」

 冷静になってくると、途端に恥ずかしさが込み上げてくる。こんなふうに抱きしめられたままなんて、さすがに落ち着かない。

「ヤダ……って言ったら?」

「ええっ⁉」

 まさかそんな返事が返ってくるとは思わず、思いきり素っ頓狂な声が飛び出してしまった。

 すると要さんは小さく笑いながら、私の存在を確かめるようにぎゅっと抱きしめる。

 その温もりに胸が熱くなった直後、名残惜しそうに腕の力が抜かれ、ゆっくりと距離ができた。

「とにかく……無事で良かった」

 安堵したように吐き出された言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

「そういえば、どうして……?」

「会社の前だったし、みのりたちの姿が目立っていて目撃者も多かったんだ」

 確かに退社時間の会社の前で言い合いになっていたのだ。あれだけ人通りが多ければ、嫌でも目についてしまう。

 そう考えると、あの場を目撃した人たちのおかげで助かったと言っても過言ではない。

「でも、どうして要さんが知っているんですか?」

「隅田のところに報告が入った」

「お騒がせしてすみません……」

 まさか室長のところにまで連絡が入るなんて思ってもみなかった。警察を呼ばなければ、社内には知られずに済むと思っていたのに。
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