恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 一八五センチの長身に、小さな顔と手足の長い均整の取れた肢体。黒髪が印象的で、切れ長の目を持つ端正な顔立ちは、芸能人と言われても違和感がない。

 一瞬にして、その場にいた女性たちの視線をさらい、完全に虜にしていた。

「副社長、お帰りなさいませ」

「ああ」

 室長のお出迎えの言葉に軽く首を縦に振る。

「橋爪さん」

「は、はい……」

(室長、勘弁して……こんな大勢の前で私の名前を呼ばないで……)

 その場にいた全員の視線が、一斉に私へと向けられ突き刺さった。

「本日より、副社長の秘書を務めていただく橋爪さんです」

「橋爪です。よろしくお願いいたします」

 丁寧に深く頭を下げて、挨拶をする。けれど顔を上げるのが怖くなるほど、周囲からの視線は痛いほどに突き刺さっていた。

「では、参りましょうか」

「ああ」

 室長の言葉に副社長は軽く相槌を打つだけで、それ以上は何も言わずにゆっくりとその場を見渡している。

 彼の視界に入った女性たちは誰もが目を輝かせて、まるで恋をしているようなうっとりとした視線で彼を見つめていた。
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