恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 ある日のこと——

「少し社内の様子を視察しに行く」

「ええっ……?」

 突然、要さんの口から飛び出した言葉に、私は思わず戸惑った。いったいどういう風の吹き回しなのだろうか。

「どうした?」

「い、いえ。突然だったので、何かあったのかと思いまして」

「何かある前に視察しておくんだ。帰国してからバタバタしていて、外出以外はほとんどこのフロアにいるだろう?」

 このフロアどころか、要さんはほぼ一日この部屋——副社長室で過ごしている。

 言われてみれば、その通りだった。

 でも、社内には同期の彼女も働いているし、他にも要さんを狙っている女性は多い。

 私に向けられる嫉妬の視線を想像しただけで、恐ろしい気持ちになる。

 それでも、私が要さんの決定に口を挟めるはずもなく——

「いつからで……」

「今からだ」

 私の言葉に被せるように、即座に返事が返ってきた。

(それって、私も同伴するってことだよね……? はぁ……)

 重いため息を胸の中で吐き出す。そして、同期の彼女——麗美の姿が、はっきりと頭に浮かんだ。

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