恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
——コンコン

「はい」

 副社長室にノックの音が響き、ちょうどその場に居合わせた私は、席を立って扉へ向かった。そして室内から扉を開くと、そこには総務部長と人事部長が立っていた。

「副社長は……」

 普段は堂々としていて威厳のある二人が、今日はどこか背中を丸めているように見える。

「副社長、総務部長と人事部長がお見えです」

「ああ、入ってもらってくれ」

「どうぞ」

 私は扉を大きく開き、二人を副社長室へと案内した。

「「し、失礼いたします」」

 二人は声を揃えて頭を下げる。その表情は強張っており、明らかに緊張している様子だった。

「そこに座ってくれ」

 要さんがソファを手で示す。

 促されるまま腰を下ろした二人だったが、その表情は依然として硬いままだった。要さんの方が年齢はずっと若い。それなのに、この場を支配する存在感は圧倒的で、次期社長として育てられてきた後継者の貫禄を嫌でも感じさせる。

「で? あの女は、どういう経緯で採用されたんだ?」

「そ、それは……」

 いきなり本題に入った要さんの、低く冷たい声が室内に響き、人事部長がしどろもどろになっている。

「うちは慈善事業をしているわけじゃない。それに、コネ入社も認めていないはずだが?」

 静かな口調にもかかわらず、部屋の空気が一気に張り詰めた。

「す、すみません!」

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