恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
勢いよく立ち上がった人事部長が、慌てたように深く頭を下げた。
「申し訳ありませんでした!」
その声には焦りと恐怖が滲んでいる。
「謝罪はいいから、まず説明をしてくれ」
要さんは冷静な口調でそう告げた。
「は、はい。実は――」
人事部長の説明によると、彼女――麗美の父親は、TOKITOに部品を供給している会社『日本モーター精機株式会社』の専務だという。そして、その取引関係をちらつかせながら、人事部へ強い圧力をかけ、娘をTOKITOへ入社させたらしい。
私が採用された年も、多くの就活生がTOKITOグループを志望していた。倍率は高く、何度も面接や試験を乗り越えた人たちの中から選ばれたのは、ほんの一握りだけだった。
そんな厳しい競争を勝ち抜いてきた人たちがいる一方で、彼女は最初から特別扱いを受けていたということになる。
そう思うと、胸の奥から怒りにも似た感情が込み上げてきた。
もちろん、どんな経緯で入社したとしても、その後真面目に働いて成果を出していれば、ここまで反感を買うことはなかったはず。けれど彼女は違った。
自分の立場を当然のように利用し、周囲に迷惑をかけ続けている。その動機も行動も不純で、とても許せるものではない。
「わかった……。あとは俺に任せてくれ」
目を閉じて何かを考え込んでいた要さんが、しばらくして静かにそう言った。
「は、はい。よろしくお願いします」
人事部長はほっとしたように肩の力を抜いた。隣にいた総務部長もまた、藁にも縋るような視線を要さんへ向けている。それだけ、麗美という存在がお荷物になっていたのだ。
「申し訳ありませんでした!」
その声には焦りと恐怖が滲んでいる。
「謝罪はいいから、まず説明をしてくれ」
要さんは冷静な口調でそう告げた。
「は、はい。実は――」
人事部長の説明によると、彼女――麗美の父親は、TOKITOに部品を供給している会社『日本モーター精機株式会社』の専務だという。そして、その取引関係をちらつかせながら、人事部へ強い圧力をかけ、娘をTOKITOへ入社させたらしい。
私が採用された年も、多くの就活生がTOKITOグループを志望していた。倍率は高く、何度も面接や試験を乗り越えた人たちの中から選ばれたのは、ほんの一握りだけだった。
そんな厳しい競争を勝ち抜いてきた人たちがいる一方で、彼女は最初から特別扱いを受けていたということになる。
そう思うと、胸の奥から怒りにも似た感情が込み上げてきた。
もちろん、どんな経緯で入社したとしても、その後真面目に働いて成果を出していれば、ここまで反感を買うことはなかったはず。けれど彼女は違った。
自分の立場を当然のように利用し、周囲に迷惑をかけ続けている。その動機も行動も不純で、とても許せるものではない。
「わかった……。あとは俺に任せてくれ」
目を閉じて何かを考え込んでいた要さんが、しばらくして静かにそう言った。
「は、はい。よろしくお願いします」
人事部長はほっとしたように肩の力を抜いた。隣にいた総務部長もまた、藁にも縋るような視線を要さんへ向けている。それだけ、麗美という存在がお荷物になっていたのだ。