恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 洗練された外観に加え、隅々まで手入れが行き届いているのが分かる。派手さはないが清潔感があり、堅実で誠実な企業という印象を受けた。

 その雰囲気は、私が抱いていた麗美と父親のイメージとはどうしても重ならない。

 こんな大きな会社で専務を務めている人物が、本当に娘のためだからといって人を脅すような真似をしたのだろうか。

 もちろん、外から見える会社の姿と、その中で働く人間の本性が同じとは限らない。

 けれど、どうしても違和感が拭えなかった。その真実も間もなく判明するはずで、そんなことを考えているうちに、私たちはエレベーターへ乗り込む。

 静かに上昇する箱の中で誰も余計なことは口にせず、緊張感だけがじわじわと胸の内に広がっていった。

 やがて最上階へ到着し、道井さんは最奥にある重厚な扉の前で足を止める。

——コンコン

「はい」

 室内から落ち着いた男性の声が返ってきた。

「社長、TOKITOグループの時任様をお連れいたしました」

「どうぞ」

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