恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
その日の数日後——私は、ある噂を耳にすることになった。
「ねぇねぇ、聞いた?」
「もしかして、自称お嬢の話?」
「そうそう、それそれ」
エレベーターの中で交わされていた、女性社員たちの何気ない噂話。意識して聞いていたわけではないのに、自然と耳に入ってきてしまう。けれどその話題の人物については、私はほとんど確信に近い予想ができていた。
「自主退職したんだって」
「え、あの人? 解雇されるのかと思ってた」
そんな言葉が続くたびに、胸の奥が少しだけざわつく。
そこは要さんなりの判断というより、取引先や周囲への影響を考えたうえでの、最低限の配慮だったのではないかと思った。表に出さないだけで、きっといくつもの事情を飲み込んだ結果なのだろう。
それに麗美の父親の方も、風の噂では役職をはく奪され、地方へ飛ばされたとも聞いた。真偽のほどは定かではないが、それでも一連の流れとしては、妙に現実味を帯びて感じられた。
「ねぇねぇ、聞いた?」
「もしかして、自称お嬢の話?」
「そうそう、それそれ」
エレベーターの中で交わされていた、女性社員たちの何気ない噂話。意識して聞いていたわけではないのに、自然と耳に入ってきてしまう。けれどその話題の人物については、私はほとんど確信に近い予想ができていた。
「自主退職したんだって」
「え、あの人? 解雇されるのかと思ってた」
そんな言葉が続くたびに、胸の奥が少しだけざわつく。
そこは要さんなりの判断というより、取引先や周囲への影響を考えたうえでの、最低限の配慮だったのではないかと思った。表に出さないだけで、きっといくつもの事情を飲み込んだ結果なのだろう。
それに麗美の父親の方も、風の噂では役職をはく奪され、地方へ飛ばされたとも聞いた。真偽のほどは定かではないが、それでも一連の流れとしては、妙に現実味を帯びて感じられた。