カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~


 それだけ言って、口を閉ざす。そういえば峰岸の名前がやけに目立っていたなあと栞奈も思い出し、ふうんと頷く。
 施術が進むうちに、話題は自然と広がった。栞奈の仕事のこと、好きな食べ物のこと。蒼人は多くを語らないが、聞いていないわけではない。栞奈が話すたびに彼の手は一瞬、止まる。
 ちゃんと聞いてる、という確信が持てた。が。

「元カレとは、完全に終わりましたか」

 思いがけない質問に、栞奈は息を呑む。

「え、はい。ブロックしました」
「そうですか」

 それだけ言って、蒼人はまた黙る。鏡越しにその顔を見た栞奈は、彼が何を考えているのかまったくわからなかった。
 仕上げのブローが終わって、栞奈が立ち上がろうとしたとき、彼が言った。

「一つ、提案があるんですが」
「なんですか?」
「カットモデルをお願いできませんか」

 栞奈は目を丸くして聞き返す。
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