カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~
「傷みはないですね」
「トリートメント、ちゃんとしてました」
「何を使ってますか? そういえばシアバターってもともと食用だったんですけど保湿力の高さからヘアケアをはじめとした美容目的で使われるようになって……」
そこから蒼人が少し饒舌になった。ヘアケアの話になると、声のトーンがわずかに変わる。おすすめのトリートメント、シャンプーの温度、乾かし方。栞奈が質問するたびに、淡々としていた表情に熱がこもってくる。
「――峰岸さんって、髪の話になると別人みたいですね」
「そうですか?」
きょとんとした表情の蒼人を見て、年上なのになぜか可愛いと思ってしまった栞奈である。
「うん。なんか、楽しそう」
少し黙った後に、彼がぽつりと呟く。
「……髪が好きなので」
「それは美容師だから?」
「美容師になる前からですね……もともとDearestarは家族経営の美容院が発端になっているので」