カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~
「……モデル、ですか。わたしが?」
「サロンのスタイル写真に使いたい。髪質が理想的なので」
「でも私、芸能人でもなんでもないですよ?」
「一般の方の方がリアルで参考になります。その分、施術料はいただきません」
栞奈はしばらく蒼人の顔を見た。相変わらず表情は読めない。それでも「髪質が理想的」という言葉は、この人が言うと妙に本気に聞こえた。
「……わかりました。やってみます」
蒼人が小さく頷いた。
「ありがとうございます。次回、詳しい内容をお伝えします」
帰り道、栞奈はスマートフォンを握りしめながら夜道を歩く。
カットモデル。髪質が理想的。
「……なんかちょっと、嬉しいんだけど」
誰に言うでもなく呟いて、栞奈は足を速めた。