カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~
chapter,3 新しい髪、新しい恋
モデル撮影当日。仕事が休みの日の昼過ぎに予定されていたこともあり、栞奈はふだんよりも柔らかい雰囲気のワンピースでサロンへ向かった。
サロンに着くと、夜の凛とした空気とは違う、昼間の朗らかな空気が漂っていた。スタッフたちが栞奈を見て「お待ちしてました」と口々に言う。蒼人に懐いているのはわかっていたが、栞奈に対しても自然に笑顔を向けてくれる。なんだかこそばゆい。
「今日はよろしくお願いします」
蒼人がいつもと同じ無表情で言う。でも栞奈にはわかってきた。これでも精一杯、愛嬌を振りまいているのだと。
栞奈以外の客の姿はなかった。彼女の施術のためだけに、スタッフたちは集い、蒼人の補佐を行うべく動いている。それだけで彼がサロンオーナーとして慕われていることが理解できた。
今日は髪を切りそろえたり手入れをしたりするだけではない、長い髪をばっさり切り落とすのだ。
首元をすっぽり覆うケープを着用した栞奈は、鏡の前でてるてる坊主のようになった自分と向き合い、こくりと頷く。