カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~

 施術が始まった。
 蒼人はこれまで以上に真剣な眼差しを向けている。栞奈の髪を丁寧に確かめて、ゆっくりと鋏を入れていく。
 何度も角度を変えて、鏡で確認して、もう一度、整える。
 終始無言だったが、その集中が栞奈にはちゃんと伝わってきていた。

「……長い髪、切るの嫌じゃないですか」

 思わず栞奈は聞いていた。
 蒼人の手が一瞬、止まる。

「嫌ですね。こんなに綺麗な、手入れの行き届いた長い髪を切るなんて、勿体ない」
「じゃあなんで」

 栞奈の問いかけに蒼人がくすりと笑う。

「それでも俺は美容師です。客の望みを叶えるのが俺の仕事ですよ」

 客の髪が理想以上のものだからって、切らないわけにはいかないのだときっぱり告げる。

「さあ、あなたに似合う髪型に仕上げましょう」

 それだけ言って、また鋏を動かし始めた。栞奈は鏡の中の自分を見る。笑っていた。
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