カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~

 言いかけて、止まった。

「……違うな」

 ぶん、と首を振ってからきっぱりと言い放つ。

「あなたと話したい」
「それは、ナンパですか?」

 栞奈は目を丸くする。

「もっとあなたのことを知りたい。それは理由になりませんか?」
「……峰岸さんって、そういうこと言えるんですね」
「言えません。今日が初めてです」

 失恋した夜に切ろうとした髪。切らなくてよかったと思う。あのとき鋏を止めたこの人に会えてよかったと思う。そして今は、過去じゃなくて目の前の人を見ていたいと思う。

「じゃあ、行きましょうか」

 ニコニコと微笑むスタッフたちに見送られながら二人でサロンを出た。
 爽やかな風が肩よりも短くなった新しい髪を揺らしている。
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