カットNG、恋はOK ~髪フェチ美容師は失恋女子を放っておけない~
chapter,1 切りたい客 vs 切りたくない美容師
木製のドアを開けると、かすかにシャンプーの香りがした。
カウンター席が四つ。背の高い観葉植物に、橙色の間接照明。チェーン店とは思えないくらい落ち着いた空間だった。スタッフらしき女性が振り返り、「いらっしゃいませ」と柔らかく微笑む。
「あの、予約なしなんですけど……」
「少々お待ちください」
女性スタッフはそう言って奥へ引っ込み、カルテらしきものを手渡す。
「こちらにご記入をお願いします」
閉店間際だからか、受付には誰も立っていない。
カルテを受け取った栞奈は筆を走らせながらぼんやりと店内を見渡す。壁には写真が飾られていた。モデルというより一般客らしき人たちの、生き生きとした表情がコルクボードに並んでいる。
みんな髪が綺麗だな、と髪型よりも髪そのものに目が行ってしまった。