待てない、夏!

第8話 怖かった

陸先輩は、

佐野を見てから、

私を見た。

「俺、あの時、
怖かったんだと思う」

静かな声だった。

「気持ちを伝えて、
振られたらどうしようとか」

先輩は
グラスに視線を落とす。

「振られて、
諦められなくなったら
どうしようとか」


………そんなこと、
考えたこともなかった。

陸先輩は、

いつだって
自信がある人だと思っていたから。

「佐野みたいに
真っ直ぐ気持ちをぶつけることも、
できなかった」

「まぁ、佐野も結局
言ってなかったけどな」

先輩が笑う。

佐野が
「うるさいっす」
と返した。

でも、

その笑顔はすぐに消えた。

「二人が付き合ってるって聞いて、
あぁ、そうなんだって」

先輩は
小さく息を吐く。

「自分に言い聞かせた」

そして、

「見守る側に回った」

そう言って、

私を見る。

「こんな奴、嫌だろ?」
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