俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。
「ううん。……別れる」空いているほうの手を握り締め、拳を固める。「あたし、……もう、便利な女はやめるの。そう、決めたの。お別れしましょう」
「うんうん。分かっているよ。疲れているんだね……すはちゃん、おうち帰ってぼくといいことしようよ」頷きながら彼氏はあたしの肩へと手を回し強引に引き寄せる。
 ……これで、手懐けられて、いい子いい子されて、尽くして。
 それが、いつものルーティーン。
 ……変わらなければならないのだ。
 変わりたいのだ。
 使いっぱしで先輩方のコーヒーを二十杯ほど買いに行って、頑張ったのに、うっかりすっころんでしまう――そんな他社さんの新人を見捨てずに、自分から引っかぶるパフォーマンスなんか出来る男を毎日、相手にしているのだ。いい加減、変わりたい。
 いつもなら腕のなかに寄り添う場面だが、あたしは声を落とし、
「……離して。もう、話すことなんかない」
 これ以上一緒にいても時間の無駄だ。彼氏はにこにこ笑って、「分かるよー」と明るく言う。
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