俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。
 ああ……こんなあたしは。
「残念。だが断る。……彼女は、守られるほど、弱い女ではないからだ」
 目の前が黒く染まる。それはなにも、眩暈を起こしたからではなく、――降り注ぐ影。
 暑くなってきたこの気候のなかで頑なに黒いスーツで武装する上司の大きな背中。
 それが、やつとあたしを隔てる壁となって、守ってくれている。
「酔っ払いになにを言ったとて無駄だが。……彼女は、聡明で、優秀で、職場のあらゆる変化に気がつくし、明るくて可愛い……貴様風情には勿体のない女だ。
 悪いが、俺は、彼女に惚れている。……譲るつもりはない」
 え? なにを言ってんの――時枝さーん! 
 仕事と飲み会でしか関わりのない間柄なのに。なにをそんな突然! 
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