俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。
 後年、アップルを開発する、スティーブ・ジョブズが服を数着に固定することが知れ渡るが、ジョブズより先に行っていたのはこちらの上司。行動のひとつひとつに、意味がある。
 無駄なことはしない主義の時枝さんが、こんなにも、肩入れしてくれているのは、どうして。
 ――好きだから、って答えに甘えるのも違う気がするし……時枝さんに、心配や、迷惑をかけるのも、なんだかなぁ。
 沈黙の間、悩んでいることが伝わったらしい。
「ぼくは、――したくないことは、しない主義だ」
 言ってのける。
 真っ直ぐに、黒曜のような美しい瞳で見つめ、
「困っているのが猫であっても。仮に、その猫がどんなに可愛くても、おれは、手出しはしない。――だが」
 こちらの注意を引きつけたうえで、一拍置くと、上司は、
「相手が愛くるしい猫なら話は別だ」
 ……あ、愛くるしい猫……? あたしがですか!? 
 いつもと同じしかめっ面なのに、発言はダイナマイト級で。強烈に、あたしのこころを襲う。
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