敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
「そうなんですか」

 仕事が忙しく、ひとり暮らしだとなおさら自炊は面倒に感じると思う。
 だから調理器具は使用感がなくて綺麗だったのかと、納得してしまった。

「慣れないキッチンで、短時間で手際よく作れるなんて、陽咲は料理上手なんだな」
「うちは母が早くに亡くなったから、自然と料理はするようになって……。あ、でも全然上手ではないですよ」

 私が作るものといえば簡単な家庭料理ばかりだ。凝った料理を作ることなんて滅多にない。
 でも、これからは努力したいと思う。……碧人さんのために。

「あの、家事のことなんですけど」

 私は持っていたスプーンを置き、意を決して口を開いた。

「私が全部やります。料理も、掃除も、洗濯も」
「それはダメ。家事は俺もやるよ。陽咲だって働いてるんだから」
「……ありがとうございます。えっと……そうですよね。できる人がやればいいですね」

 そう言って折れてみたものの、できる限り家事は私がやるつもりでいる。碧人さんより先に動けばいいだけだ。
 自分の家で安全に暮らせない私に、生活できる場所を与えてくれただけでもありがたいのに、彼の家がこんなに豪華で素敵なマンションだったのは想定外だった。

 今の時代、家事は妻がやるものという概念は古い。それはわかっているけれど、私にはそれくらいしか恩返しできないから。
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