敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
「婚姻届、区役所へ出したら手もとに残らないですよね。写真に残しておきます」

 このデザインの婚姻届は、世界に一枚しかない。描かれたイラストを見れば見るほど、提出するのがもったいないとさえ思ってしまう。
 私はテーブルの上に広がった用紙にスマホを向け、パチリと一枚写真を撮った。

「せっかくだから、ふたりで並んで撮らないか?」

 私が撮影しているあいだに、いつの間にか彼が自室から三脚を持って戻ってきた。高さを調整して、自分のスマホをセットし始める。

「あの、私……普段着で、お化粧もしてないんですけど……」
「そのままでいいよ。今この瞬間を収めたい」

 そう言いながら、彼が私のすぐ隣に腰を下ろす。
 婚姻届をスマホに向けて掲げたので、私も反対側の紙片を持ってにこりと微笑んだ。

「いくよ?」

 彼がもう片方の手で小さなリモコンを操作して、パシャリとシャッターが切られた。

「あ、メガネかけてると野暮ったく見えるから、はずしたほうがよかったかな……」
「じゃあ、もう一回撮る?」

 せっかくの思い出づくりならと思い、メガネをはずしてそっとテーブルの上に置き、仕切り直してもう一度同じように写真を撮った。

「メガネもいいけど、コンタクトにするのもアリかも」

 至近距離で見つめられ、ドキンと大きく心臓が跳ねた。
 逃げ場をなくした私の視線は宙を泳ぎ、しだいに頬が熱を帯びていく。
< 51 / 130 >

この作品をシェア

pagetop