敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 あわてて身を引こうとしたけれど、まだ足もとがおぼつかない。

「けがをしなくてよかった」

 ホッとしたように彼がつぶやき、ゆっくりと私の身体から手を放した。
 碧人さんの体温に溶かされ、こんなふうに大事に扱われたら、どうしても勘違いしそうになる自分がいる。
 しっかりしなきゃ。これは〝契約〟なのだと、もう一度気を引きしめた。


 このあと、碧人さんが書店まで車で送ってくれた。
 勤務時間より早めに着き、事務所で仕事をしていた店長に結婚の件を伝えたら、想像以上によろこばれてしまった。
 住所や氏名の変更手続きなど、当然ながら本社へも連絡を入れなくてはいけないので、その説明を聞いたあと、いつものように遅番の勤務につく。

「ちょっと、陽咲さん!」

 バックヤードで椅子に座ってポップの整理をしていたら、うしろから声をかけられ、振り向くと血相を変えた賢也くんが立っていた。

「ビックリした。どうしたの?」
「今の言葉、そのまま返しますよ。結婚したって本当ですか⁈」
「ああ……うん」
「なんでいきなり? ずっと彼氏いないって言ってたじゃないですか」

 賢也くんがテーブルに片手をつき、血気迫る勢いで私を見下ろしてくる。恋愛と無縁だった私が結婚したと聞いて、相当驚いたらしい。

「ちょっとご縁があってね」
「は? いったい相手は誰なんです?」

 真剣な表情でそう聞かれたら、まるで悪いことでもして取り調べを受けているような気持ちになった。
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