敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
「そう。お父様は京極グループのトップでいらっしゃるから、お忙しいのはわかってるんだけど。パパは私を碧人さんのもとへ嫁がせたいみたいなのよね」

 彼女はマイペースな空気をまといながら、いつも意思ははっきりとしている。
 三白眼の瞳は、常になにかを値踏みしているみたいに感じて、実は少し苦手だ。

(待ってくれ。両家揃って食事って……形式的な見合い、もしくは結婚前の顔合わせじゃないか)

 まずいことになった。このままでは、俺は弘花さんと結婚させられそうだ。
 篠部社長が望んでいると言っているけれど、きっと彼女自身が乗り気なのだと思う。

「私、次の予定があるからそろそろ行かなきゃ。とにかく、そういう話が出ていることを伝えにきたの。じゃあまた連絡するわ」

 弘花さんが腕時計で時間を確認したあと、勢いよく立ち上がった。そのまま部屋を出て、エレベーターホールのところで見送る。

 再び部屋へ戻った途端、無意識に盛大なため息が出た。
 シャトンは多くの人気声優が所属する声優プロダクションだから、この先も仕事を依頼していきたい。

(恩のある篠部社長を怒らせて敵に回したくはない。でも……最終的にはそうなってしまうだろうな)

 俺の人生は俺自身のものだ。結婚相手は自分で決める。政略結婚なんて絶対にしない。
 だいたい、弘花さんほどの器量ならいくらでも相手は見つかるはずなのに、どうして俺なのか……。

 答えはひとつしかない。俺の父親が京極グループのトップだから。
 またこれか……と、お決まりのパターンに心底辟易とした。結局、篠部社長も弘花さんも、俺自身に興味はないのだ。
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