敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 ウソではないけれど、彼が想像以上に驚いた声を出したため、余計なことを言ったと後悔の念が押し寄せた。

「心配しないでください。もう大丈夫ですから」
『すぐ帰る。ゆっくりして待ってて』

 そう言って彼は電話を切ってしまった。イベントが終わったあとも、打ち上げなどがあるんじゃないかと思うのだけれど……。

 それから一時間もしないうちに玄関の鍵が開く音がした。リビングに駆け込んできた碧人さんは軽く息を切らしながら、まだ上着も脱がないうちに私の肩に手を掛ける。そして、切羽詰まったような表情で顔をじっと覗き込んできた。

「お、おかえりなさい」
「陽咲、容体は? 寝てなくていいの? 病院行く?」

 矢継ぎ早に心配の言葉が飛んでくる。彼の優しさがくすぐったくて、私は困ったように小さく笑みをたたえた。
 そのあと、大げさだと伝えるようにゆっくりと首を横に振る。

「今はもう平気です。会場内はすごい熱気だったから……人酔いしたみたいで」
「……大丈夫ならいいんだけど」
「イベント、大盛況でよかったですね」

 碧人さんの探るような視線がするどすぎて、思わず視線を背けてしまった。勘のいい彼のことだから、様子が変だと気づいたかもしれない。

「食事、まだですよね? なにか作りますね」

 逃げるようにキッチンへ向かおうと背を向けたそのときだった。背後から包み込むように回された腕の力強さに、ドキンとひとつ心臓が跳ねた。抱きしめられていると意識すると、自然と身体が固まってしまう。
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