敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 ふわふわと身体が宙に浮く、そんな夢を見ていた。重力から解放されたような感覚に身をゆだねていたものの、伝わってきた体温と、(かす)かなフレグランスの香りで目を覚ます。
 ぼんやりと目を開けた先にあったのは、見慣れた端正な横顔だった。

「……え、碧人さん⁈」

 これは夢じゃない。彼のたくましい腕によって、私の身体は横抱きにされていた。

「悪い。ベッドへ運ぼうと思ったんだけど、起こしちゃったな」
「あの、すみません。下ろしてください」

 彼が慎重な手つきで私をゆっくりと床へ立たせた。
 抱きすくめられるように身体が密着していたと意識した途端、一気に顔に熱が集まってくる。

「お、おかえりなさい」
「ただいま」
「ごめんなさい。私、うっかり寝ちゃって」

 彼に触れられたところに余韻が残っているせいで、恥ずかしくてまともに顔を見られない。

「すぐに夕飯を作りますね」

 逃げるように視線を逸らし、彼の脇をすり抜けてキッチンへ向かおうとした。しかし、その前に彼の大きな手が伸びてきて、私の手首を優しくつかまえる。

「陽咲は疲れてるんだ。ゆっくりしてて。夕飯は俺が作る」
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