敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
「え、でも……家事は私が」
「たまには俺にもやらせてくれよ。簡単なものしか作れないけど」

 碧人さんは私をソファーに座らせ、上着を脱いでキッチンのほうで調理を始めた。
 ゆっくりしているよう言われたけれど、どうしても気になって様子を見に行ってしまう。

「パスタですか?」

 ザル付きのパスタポットで湯を沸かす準備がされていたので、思わずそう声をかけた。
 彼はというと、水洗いしたほうれん草を包丁で切っている。

「ツナとほうれん草の和風パスタ。それなら作れるから。待ってて」
「ありがとうございます」

 碧人さんは包丁を動かす手を止めると、少しだけ目を細めて穏やかな笑みを浮かべた。

「礼を言うのは俺のほうだよ。率先して家事をやってくれて、本当に助かってる」
「そんな……」
「でも、俺もできることはやる。前にも言ったけど、陽咲に全部押しつける気はないから」

 妻を演じるのが私の役割なのに……。
 彼の気遣いがうれしい反面、自分ばかりが甘えてしまっている気がして、申し訳なさが胸の中に広がった。

「そうだ、明日は外で食事しない? たまにはいいだろう? 連れていきたいレストランがあるんだ。予約しておくよ」
「ありがとうございます」

 自分が行きたいからだと言われたら、断る理由がなくなってしまい、素直にコクリとうなずいた。
 碧人さんと接すれば接するほど、本当に思いやりのある人だと気づかされる。
 彼が作ってくれたパスタはシンプルな味付けで、彼の性格を表したみたいに優しい味がした。
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