空に吹く、風の音を教えて。
そして、遂に試合が始まった。

相手は3年生。

実質1歳しか差がないとはいえ先輩相手にバンバンボールを投げつけるなんて普通の後輩だったら出来ないのだけれど。


…すご。


普通じゃない人がいるんだよね。

もちろんみんな頑張ってはいるんだけど一人だけ明らかに気迫が違うし、動きも無駄がなく俊敏かつ的確。

狙った獲物は逃がさない、みたいな。

確かにあの絶対零度の視線を投げかけられたら年齢関係なく萎縮しちゃうよね。


「よーし!やしろん、やったれー!」


最初の方で呆気なく当てられて外野にいる光莉ちゃん。

いつもは歪み合っているのに今は大声で応援してる。

少しは嬉しそうにしてるのかな。

私はボールをよけたり走ったりしながらチラッと弥代くんを見てみた。

いや、表情ひとつ変えず飄々としている。

すごすぎ。

さっきからそればかりだけど、それ以上の言葉が見当たらない。

肝が据わってるってこういうことを言うんだろうな。

精神の軸が安定している人は行動の軸もブレないんだろうな。

私とは真逆だ…。

なんて考え事をしていると、突然ーーー。


「逃げろ、バカ!」

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