空に吹く、風の音を教えて。
電車の中で私は弥代くんから話を聞いた。

本当は颯太を尋問にかけたかったが、例に漏れず、光莉ちゃんの隣をキープしていたから。

面と向かってちゃんと話すのはこれが初めてで若干緊張しながらも聞き出した。

まずは、2人の馴れ初め。

弥代くんが所属しているアマチュアバンドの去年のクリスマスライブに颯太が観に行き、弥代くんのギターボーカルに惚れてしまったらしい。

颯太はほぼ毎日のように練習場の貸しスタジオに通い、懇願したらしい。

そういうのが面倒な弥代くんは突っぱねたかったけど、最終的にはOKし、今に至る。

そして、私に黙っていたことについて。


「最初は知らなかったし。ほら、1年ん時は別クラだったじゃん」

「でも進級して同じクラスになった時に気づいたでしょ?なんでその時教えてくれなかったの?」

「黙ってた方が面白そうだったから。…ほら、そういう顔とか」

「いや、どういう顔?」


弥代くんはふっと笑ってからこっちを見つめるようにして口を動かした。


「今くらい感情剥き出しの方が人間らしくていいと思うけど」


わたしはふと前に言われたことを思い出した。



ーー周りばっか見て自分が見えてない。言いたいことがあっても飲み込んで。言ったら言ったで後悔して口結んで、以降何も言わなくなる。その面倒くさい思考から生まれる行動の原理、分かる?


ーーその全て、人に嫌われたくないって気持ちの現れだから。無意識にそうしてる。昔からの心のクセが染みついてるって感じ。オレ、そういうの見てるとイラつくんだよね。だからさ、やめてもらえる?



つまり、だ。

今の私は多少言いたいことも言えるようになったって

そうとらえていいよね?

弥代くんからすればまだまだ面倒くさいやつなのかもしれないけど。

それでも前よりは確実に進歩してるよね?

って、聞けたらもっといいのかもしれないけどなんだか眠そうな弥代くんに遠慮してそのあとの言葉は飲み込んだ。

いつかもっと、

もっと自分らしく生きられているって自信をもって言えるようになったら、

そしたら聞いてみようかな。
< 41 / 82 >

この作品をシェア

pagetop