空に吹く、風の音を教えて。
いつなの?

そう聞こうとしたら、私の前にぬうっと大きな背中が現れた。


「あ、ゆうくん!俺さ音楽系の部活とかサークルとか見たいんだよね!天才の進学先にふさわしいし、来年のイメージつけとかないと!」


え?颯太ここ受けるつもりなの?

初耳なんだけど。

なんて、今はそんなことを気にしている場合じゃなかった。


「それ、とりあえず後でいい?オレ気になって仕方ない奴いるから。どこ突いたらボロが出んだろ」

「え?ゆ、ゆうくん…?」


颯太がしきりに私に目配せする。

私だってどうしたらいいかわからないから。

そもそも勝手にしゃべって勝手に弥代くんのこと連れてきたのは颯太でしょ?

私に投げないでよ…。

二人同時にご機嫌取りなんて不器用な私にはできないからひとまず颯太に仕掛けるか。


「光莉ちゃん行っちゃったよ!颯太も行かなくていいの?」

「あ!確かに!ぼさっとしてたら俺様の光莉ちゃんが忌々しいあいつのとこに…!風花ありがと!先行く!」


よし、行った。

あとはいつもより10割増しで眼光が鋭い弥代くんをどうしようかって話だけど。

文脈から考えて、


「弥代くんもダンス見たいんだよね?とりあえずみんなの後追いかけよう」


と言ってみた。

弥代くんが振り返りこっちを見つめる。

だから、いつものマシマシで怖いんだって…。


「え?違うの?」

「見たくはない。けど見なきゃならない。んで、保泉さんは見れんの?見たいの?」


あっ。

そっか。

これは弥代くんなりの気遣い、か。

颯太が話したってことはなんとなく私と浅羽くんが気まずいこと知ってるもんね。

そりゃあ、心配にもなるか。

というか。


「心配してくれてるんだ?」


疑問をそのまま口にしてしまいハッとして口を閉じようとしたら、

骨ばった大きい左手で私の頬をサンドされてしまった。


「へ?」


マヌケな声が出る。


「滑稽、滑稽」


そしてニヤリと笑われる。


「見るのか見ないのか。ちゃんと質問に答えないとずっとこのまんまだけど、言い訳?」

「わ、わかった。見…見ます。見れます。せっかく来たし、浅羽くんとか関係なく見たいから」


あっそと言って最後は呆気なく離された。

いつも以上に今日は弥代くんのこと読めないなあ。

まるで雲のように掴めない彼を恨めしく思いながら、ひとまず最初の目的地へと向かったのだった。

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