空に吹く、風の音を教えて。
※回想
私と浅羽くんは川越第三小学校5年1組のクラスメイトだった。
3、4年の時も同じクラスではあったけれど、これといって接点はなかった。
そんな私たちの距離が少し縮まったように思えたのはやっぱりあの出来事だろう。
5年生に進級してほどなくしてクラスでいじめが始まった。
その標的になったのは和実ちゃんだった。
今の和実ちゃんからは想像もつかないけど、あの頃の和実ちゃんは分厚いメガネをかけてて大人しくていつも教室の自分の席で黙々と読書をしているような、いかにもいじめっ子の標的になりやすい雰囲気の子だった。
案の定、いじめっ子たちは和実ちゃんの容姿をいじったり、和実ちゃんが大切にしていた本をゴミ箱に捨てたり、教科書を隠したりなど陰湿ないじめを始めた。
身体的な攻撃はなかったものの、精神的に追い詰められた和実ちゃんは学校を休むようになった。
5月のGWを開けたら心機一転して来てくれるかななんて淡い期待をしてみてもやはり状況は一向に良くならなかった。
担任の先生は高学年を初めて受け持つ20代の若い女の先生だったし、失礼だけどあまり頼りにならなかった。
私はこのまま見て見ぬ振りをしていたら、いじめっ子たちと一緒になってしまうって思い、せめてもと思って毎日いじめっ子たちが汚して帰る和実ちゃんの机やロッカーを掃除していた。
そんな日々が1週間くらい続いたある日。
クラス委員の集まりを終えた浅羽くんが私ひとりだけの教室に戻って来た。
「何してるの?」
浅羽くんが私に話しかけてくる。
見ればわかるじゃん。
そんなこといちいち聞かないでよ。
無力な自分に対する怒りを雑巾に込めてゴシゴシと机を拭く。
何の罪もない子にこんな仕打ちをするなんて、おかしい。
でも、私にはどうすることも出来ない。
一体、どうすればいいの?
どうすれば和実ちゃんは戻って来られる?
そう、自問自答していると、浅羽くんが近寄って来てこう言った。
「俺も手伝うよ」
私はその時思ったんだ。
この人しかいない、って。
みんなの中心にいて、委員長っていう権力もある。
だったら、変えられるじゃん。
なのに、なんで…
なんでこんなことしかしてくれないの?
そんな思いがそのまま口から漏れ出た。
「委員長なのに…」
「え?」
浅羽くんの視線を感じた。
私は俯いたまま続ける。
「委員長なのに、委員長のクセに…なんで、なんで和実ちゃんのこと何もしてくれないの?…助けて、あげてよ」
私のその言葉に浅羽くんは口をつぐんだ。
私は咄嗟にごめんと謝ったけど、それに対して浅羽くんは、
「ありがとう、ちゃんと伝えてくれて。…そう、だよね。委員長なんだから、クラスメイトを助けてあげるの当たり前だよね」
そう答えた。
「私も協力するから。だから…」
「大丈夫。必ず戻してみせるから」
その時の真っ直ぐ未来を見つめていたあの眼差しは私の脳裏に焼きついている。
私と浅羽くんは川越第三小学校5年1組のクラスメイトだった。
3、4年の時も同じクラスではあったけれど、これといって接点はなかった。
そんな私たちの距離が少し縮まったように思えたのはやっぱりあの出来事だろう。
5年生に進級してほどなくしてクラスでいじめが始まった。
その標的になったのは和実ちゃんだった。
今の和実ちゃんからは想像もつかないけど、あの頃の和実ちゃんは分厚いメガネをかけてて大人しくていつも教室の自分の席で黙々と読書をしているような、いかにもいじめっ子の標的になりやすい雰囲気の子だった。
案の定、いじめっ子たちは和実ちゃんの容姿をいじったり、和実ちゃんが大切にしていた本をゴミ箱に捨てたり、教科書を隠したりなど陰湿ないじめを始めた。
身体的な攻撃はなかったものの、精神的に追い詰められた和実ちゃんは学校を休むようになった。
5月のGWを開けたら心機一転して来てくれるかななんて淡い期待をしてみてもやはり状況は一向に良くならなかった。
担任の先生は高学年を初めて受け持つ20代の若い女の先生だったし、失礼だけどあまり頼りにならなかった。
私はこのまま見て見ぬ振りをしていたら、いじめっ子たちと一緒になってしまうって思い、せめてもと思って毎日いじめっ子たちが汚して帰る和実ちゃんの机やロッカーを掃除していた。
そんな日々が1週間くらい続いたある日。
クラス委員の集まりを終えた浅羽くんが私ひとりだけの教室に戻って来た。
「何してるの?」
浅羽くんが私に話しかけてくる。
見ればわかるじゃん。
そんなこといちいち聞かないでよ。
無力な自分に対する怒りを雑巾に込めてゴシゴシと机を拭く。
何の罪もない子にこんな仕打ちをするなんて、おかしい。
でも、私にはどうすることも出来ない。
一体、どうすればいいの?
どうすれば和実ちゃんは戻って来られる?
そう、自問自答していると、浅羽くんが近寄って来てこう言った。
「俺も手伝うよ」
私はその時思ったんだ。
この人しかいない、って。
みんなの中心にいて、委員長っていう権力もある。
だったら、変えられるじゃん。
なのに、なんで…
なんでこんなことしかしてくれないの?
そんな思いがそのまま口から漏れ出た。
「委員長なのに…」
「え?」
浅羽くんの視線を感じた。
私は俯いたまま続ける。
「委員長なのに、委員長のクセに…なんで、なんで和実ちゃんのこと何もしてくれないの?…助けて、あげてよ」
私のその言葉に浅羽くんは口をつぐんだ。
私は咄嗟にごめんと謝ったけど、それに対して浅羽くんは、
「ありがとう、ちゃんと伝えてくれて。…そう、だよね。委員長なんだから、クラスメイトを助けてあげるの当たり前だよね」
そう答えた。
「私も協力するから。だから…」
「大丈夫。必ず戻してみせるから」
その時の真っ直ぐ未来を見つめていたあの眼差しは私の脳裏に焼きついている。