空に吹く、風の音を教えて。
5.前を向いて
真星の文化祭が終わり、これまでと変わらない日常が戻ってきた。

と言いたいところだけど、そんなわけなかった。


「風ちん今日も元気ない。大丈夫?」

「うん。大丈夫は大丈夫なんだけどね」

「なんてか、深く考えすぎないほうがいいと思うよ。こういうのはノリってかさ。まあ、ウチの場合はこの子はビジュがよき!とか、あの子は性格がタイプーとか、直感で好きになってそのまま推しになってるから、推しが増えすぎるんだけど…。って、推しとカレシを一緒にしちゃまずいか」

「ううん。参考になった。そうだよね…うん。あんまり考えないようにする。それよりも今日はバイトの日だし、そっちに注力しないと」

「そっか。例のクレープ屋さんの」


弥代くんの推薦もあって、文化祭の3日後には面接を受け、即採用してもらえて、今は平日2日と土日のピークタイムに働いている。


「弥代くんのお姉さん、悠花(はるか)さんっていうんだけどね、物腰柔らかくていっつも丁寧に教えてくれるんだ。だからすごく楽しいしバイトなのに息抜きになってる」

「風ちんバイトしてる時が一番生き生きしてるんじゃない?なんか楽しそうでいいなあ!」


と、話しているところに弥代くんが眠そうな目をこすりこすりやってきた。

昨日も颯太の帰りが遅かったからギターの練習をしてたんだろう。


「おはよ」


弥代くんが欠伸交じりだけど自分から挨拶してくれる。


「やしろん、おっはー!ちょうど今やしろんお姉さまのクレープやさんの話してたんだよ!風ちん、バイト楽しいって!」

「倉石さんの声、バカでかいから聞こえてた。…まあ、楽しいなら、よかったな」

「ほんと、楽しいよ。紹介してくれてありがとう」


私がそう言うと、ツンと口を尖らせて弥代くんは自分の席に行ってしまった。


「やしろん、心中お察しいたします」

「え?」

「ううん、なんでもない」


あれから2週間くらい経とうとしてるけど、なんというかずっと隠し事されてる感じがするんだよね。

光莉ちゃんと弥代くんの態度がなんとなく今までと違うような。

よそよそしい?

いや、それとも違う。

うまく言葉にできないけど、違和感があるんだよね。

颯太に探りを入れようにもいっつも誤魔化されるし。

16歳、悩みは尽きないよ。


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