空に吹く、風の音を教えて。
その日の放課後。
私は17時から20時までバイトだった。
バイト先のカフェはこじんまりとしているけど、内装はちょっとメルヘンな感じで、家具やカップも世界観を統一するためにこだわっていて居心地がいい。
イートインスペースが6席しかないため、たいていはテイクアウトのお客様だから、私は悠花さんの補助で袋やカトラリーを用意したり、ドリンクの注文分をカップに注いだりしている。
今日もそんなこんなであっという間に3時間が経ってしまった。
「風花ちゃん、今日もありがとね。手際いいからサクサクさばけて、ほんと助かってる」
「いえいえ、私なんてそんな…」
「あ、そうだ!自分で作ってみる?まだ少し材料余ってるし」
「いや、でも…」
「風花ちゃんもクレープ作れるようになってくれるとすごく助かるなぁ」
そう言われてしまったら、やるしかない。
私は意を決して悠花さんの指導を受けることにした。
生地の流し方、焼き時間、生クリームの絞り方、トッピングの配置のコツなど一通り悠花さんの説明の通りにやってみて、なんとか最後までたどり着いた。
「うん!やっぱり上手!絶対センスあるよ!」
「そ、そうですか…?」
「私が初めて作った時よりも上手いから、自信もって」
「は、はい…」
若干生地は香ばしい感じになってしまったけど、確かに形は悪くないかもしれない。
悠花さんにおだてられて、ちょっと鼻高になって目がおかしくなってるだけかもしれないけど。
「ねえ、風花ちゃん。なんか最近悩んでる?」
「えっ?あ、いや…」
「無理して笑ってる気がするからさ。たまには自分にご褒美あげなね。あと、何かあったら遠慮なく相談すること!私なら年も離れてるし、逆にいいアドバイスできるかもしれないし、頼ってくれてもいいんだよ?」
悠花さんが温かい紅茶を淹れてくれた。
クレープと一緒にどうぞ、と言って自分は締めの作業を始める。
私は椅子に腰かけて、紅茶を一口飲み、クレープにかぶりついた。
口の中に薄いクレープ生地とさっぱりとした生クリーム、ねっとりのバナナ、程よく苦くて甘いチョコソースが一気に入ってくる。
「おいしい…」
すべての要素がバランスよく組み合わさってて本当に美味しい。
ほっぺたが落ちるっていうのはまさにこういうことかと思いながら、私は夢中で食べ進めた。
そして、私がまるまる1つ完食した時、悠花さんがこちらを振り返った。
「美味しいスイーツを閉店後一人で味わうって最高でしょ?」
「はい、至福の時間でした。張りつめていた心も少し緩んだ気がします」
「そうそう。こういう時間が大事なんだよ。誰にも邪魔されず、ただ味覚だけを働かせて甘いものに浸る。そうしてると次第にいい意味で脳が溶かされて、さっきまで浮かんでた嫌なこととか不安とか消えてくから。スイーツデトックスて名づけようかな?」
「ふふ。でも、ほんとそんな感じです」
そう私が言うと、悠花さんの相好が崩れた。
「良かった。やっと笑ってくれた」
「あ…」
「ゆっくりでいいから自分の気持ちを感じて、自分が1番大事だって思うもの、ちゃんと見つけてね」
「はい…」
悠花さんのおかげで私は少しほっとした。
来るときは少しダル重く感じていた体も、食べた後の今のほうが軽く感じる。
着替えをし、店を出ると、そこには満天の星空が広がっていた。
どうしてかな?
何度も見ているはずなのに今が1番きれいに見える。
頬を撫でる風は若干冷たいけど、澄み切っていて新鮮だから肺いっぱいに吸い込みたくなる。
私は深呼吸をした。
細胞1つ1つにエネルギーがいきわたっていく。
「スイーツデトックスか…」
私も、悠花さんみたいにスイーツで癒せる人になってみたいな。
「…あ」
今、私…
自分の気持ち、見えた。
初めて、だ。
こんなに輪郭がはっきりしてる感情は。
ふと胸に手を当てる。
心臓、バクバクしてる。
他の人にも聞こえてないか心配になるほどに。
私…
見つけ、ちゃったのかも。
私のやりたいこと。
私は17時から20時までバイトだった。
バイト先のカフェはこじんまりとしているけど、内装はちょっとメルヘンな感じで、家具やカップも世界観を統一するためにこだわっていて居心地がいい。
イートインスペースが6席しかないため、たいていはテイクアウトのお客様だから、私は悠花さんの補助で袋やカトラリーを用意したり、ドリンクの注文分をカップに注いだりしている。
今日もそんなこんなであっという間に3時間が経ってしまった。
「風花ちゃん、今日もありがとね。手際いいからサクサクさばけて、ほんと助かってる」
「いえいえ、私なんてそんな…」
「あ、そうだ!自分で作ってみる?まだ少し材料余ってるし」
「いや、でも…」
「風花ちゃんもクレープ作れるようになってくれるとすごく助かるなぁ」
そう言われてしまったら、やるしかない。
私は意を決して悠花さんの指導を受けることにした。
生地の流し方、焼き時間、生クリームの絞り方、トッピングの配置のコツなど一通り悠花さんの説明の通りにやってみて、なんとか最後までたどり着いた。
「うん!やっぱり上手!絶対センスあるよ!」
「そ、そうですか…?」
「私が初めて作った時よりも上手いから、自信もって」
「は、はい…」
若干生地は香ばしい感じになってしまったけど、確かに形は悪くないかもしれない。
悠花さんにおだてられて、ちょっと鼻高になって目がおかしくなってるだけかもしれないけど。
「ねえ、風花ちゃん。なんか最近悩んでる?」
「えっ?あ、いや…」
「無理して笑ってる気がするからさ。たまには自分にご褒美あげなね。あと、何かあったら遠慮なく相談すること!私なら年も離れてるし、逆にいいアドバイスできるかもしれないし、頼ってくれてもいいんだよ?」
悠花さんが温かい紅茶を淹れてくれた。
クレープと一緒にどうぞ、と言って自分は締めの作業を始める。
私は椅子に腰かけて、紅茶を一口飲み、クレープにかぶりついた。
口の中に薄いクレープ生地とさっぱりとした生クリーム、ねっとりのバナナ、程よく苦くて甘いチョコソースが一気に入ってくる。
「おいしい…」
すべての要素がバランスよく組み合わさってて本当に美味しい。
ほっぺたが落ちるっていうのはまさにこういうことかと思いながら、私は夢中で食べ進めた。
そして、私がまるまる1つ完食した時、悠花さんがこちらを振り返った。
「美味しいスイーツを閉店後一人で味わうって最高でしょ?」
「はい、至福の時間でした。張りつめていた心も少し緩んだ気がします」
「そうそう。こういう時間が大事なんだよ。誰にも邪魔されず、ただ味覚だけを働かせて甘いものに浸る。そうしてると次第にいい意味で脳が溶かされて、さっきまで浮かんでた嫌なこととか不安とか消えてくから。スイーツデトックスて名づけようかな?」
「ふふ。でも、ほんとそんな感じです」
そう私が言うと、悠花さんの相好が崩れた。
「良かった。やっと笑ってくれた」
「あ…」
「ゆっくりでいいから自分の気持ちを感じて、自分が1番大事だって思うもの、ちゃんと見つけてね」
「はい…」
悠花さんのおかげで私は少しほっとした。
来るときは少しダル重く感じていた体も、食べた後の今のほうが軽く感じる。
着替えをし、店を出ると、そこには満天の星空が広がっていた。
どうしてかな?
何度も見ているはずなのに今が1番きれいに見える。
頬を撫でる風は若干冷たいけど、澄み切っていて新鮮だから肺いっぱいに吸い込みたくなる。
私は深呼吸をした。
細胞1つ1つにエネルギーがいきわたっていく。
「スイーツデトックスか…」
私も、悠花さんみたいにスイーツで癒せる人になってみたいな。
「…あ」
今、私…
自分の気持ち、見えた。
初めて、だ。
こんなに輪郭がはっきりしてる感情は。
ふと胸に手を当てる。
心臓、バクバクしてる。
他の人にも聞こえてないか心配になるほどに。
私…
見つけ、ちゃったのかも。
私のやりたいこと。