空に吹く、風の音を教えて。
「こんなとこで何ボケっと立ってんの?」

「ふぇっ?」


意識を現在地点に戻す。

目の前にいたのは…


「あ!悠雅!ちょうどいいところに来た!いつもより遅くなっちゃったから送ってってあげて」


シャッターを閉めに出てきた悠花さんに弥代くんに…。

弥代姉弟に挟まれてしまった。


「オレ、腹減ったんだけど」

「残念でした~。材料もうありませ~ん。それより早く行ってきな」

「ったく、人使いの荒いお姉さまだ」


なんて悪態をつきながらも、再び歩き出す弥代くん。


「さっき公園のあたりまで颯太のこと送ってきたばっかなんだけど」

「な、なんかごめん…」

「まあ、別にいいけど。…ちょっと聞きたいことあったし」


ギターを背負ってて重いのか、弥代くんはいつもよりゆっくり歩いている。

私は立ち仕事に慣れることなく、毎回生まれたての小鹿のようになるからこのくらいのペースでちょうどいいんだけど。

って、もしかして

合わせてくれてる?

やっぱり弥代くんて根が優しいよね。


「さっき、久しぶりに保泉さんが笑ってるとこ見た」

「え?」

「なんか、見つけた?」


それに弥代くんもだいぶ察しの良い方なので、というより私が顔に出やすいだけなのかもだけど、とにかくばれてしまったなら言うしかない。

というより、今は、

聞いてほしいかも。

だって、この心臓がバクバクいって、

今にも飛び出しそうなくらい

高揚して抑えきれないから。


「高校2年生のしかも冬になって、今更かよって思うかもしれないけど…私、やっと見つけたかもしれないんだ。自分の、やりたいこと。
今日初めて自分でクレープを作らせてもらって、食べて、食べ終わった時にすごくホッとしたんだ。そして、一人になってふと空を見た瞬間、なんか急に思い立って。
あのね…私、みんなを癒せるスイーツを作りたい。落ち込んだり、疲れたりしてるときに心の支えになれるような、そんなスイーツを作りたいって、そう思ったんだ。これって、夢って言っていいのかな?」


< 60 / 82 >

この作品をシェア

pagetop