空に吹く、風の音を教えて。
弥代くんは立ち止まった。

大きなギターケースが反転して弥代くん自身が現れる。

街灯に照らされた弥代くんは、少し物憂げな表情でこちらを見ていた。


「運命、なんじゃない?」

「運、命…?」

「今この瞬間、夢に出会った。出会った今、運命になった。オレはそう、思うけど」

「ん?」


分かるようなわからないような。

でもバンドマンってこういう歌詞書くよね。

どこかで聞いたことある気がする。

なんて言ったら怒られそうだから言わないけど。


「やっと、自分で1歩踏み出せたんじゃない?誰の手も借りないで」

「なら、嬉しい…。ほんとに、嬉しい」


ずっと誰かに囲まれていながらもひとりぼっちな気がしていた。

自分だけあの頃のままで成長できていないんじゃないかって思って焦って、不安で仕方がなかった。

けど、やっと見つけられて、私の精神の軸が輪郭を帯びてきた気がする。

その手助けをしてくれたのは、

きっかけをくれたのは、

弥代くんだ。

お礼言わなきゃ。


「弥代くん、ありがと。私を悠花さんのお店に導いてくれて」

「…あん時、素直だったから。保泉さんが初めて心の底から笑ったと思ったから。それでちょっと助け舟出してみたくなっただけ。これで、わかったよね?好きなもん、好きって信じて真っ直ぐ歩いていっていいって。そしたらちゃんと明るい場所に出られるから」

「うん…!」


本当にその通りだ。

私、少しだけ自分を認められた。

許せた。

好きになれた。

だから、このまま、

この道を信じて歩こう。

そしたら、いつか、

自分で輝けるようになって、

返事、できると思うから。

それまで待たせるのは申し訳ないけど、

もう少しだけ待ってて。

昊くん…。

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