空に吹く、風の音を教えて。
「オレからもちょっと聞きたいこと、あんだけど」

「うん、何?」

「回りくどいのめんどいから、単刀直入に聞くけど、やっぱあの日…浅羽に告白されたわけ?」

「…あ、うん」

「そ」


しばらくお互いに黙ったまま歩く。

右折してさらにまだだんまりを決め込む。

この状況で何を話したらいいか分からないし、私はもう言うこと言ったから次は弥代くんの番だし。


「ずいぶんと」

「ふえっ?」


突然喋り出すからびっくりして声が翻ってしまった。


「ずいぶんと毎日苦悶の表情だったから返事はまだって感じ?」

「あ、うん。待っててくれるって言ってたから」

「じゃあもし待つって言われなかったら、なんて答えてた?」

「そ、それは…」


確かに、そうだ。

今すぐ答えが欲しいって言われたら私はなんて答えていたんだろう。

その場で答えを出すとしたら、私は…。


「好きか好きじゃない、どっちだった?」

「好きって言っても好きじゃないって言っても嘘になるから、私は…たぶん断ってたと思う」

「嘘つきにはなれないと」

「私、ずるいからそう言い訳して、本当は昊くんの隣にいられる自信がなかったから逃げるっていう選択肢を選んだんじゃないかと思う」


そう。

そう、なんだ。

今は自分の光を出していける場所を見つけて、これから走り出すことが出来るけど、

あの日の私にはなかったから、

逃げるしかなかったんじゃないかな。

でも、なんでそんなこと弥代くんは聞くんだろう。

私のこと根掘り葉掘り聞いて、心配してくれてるのかな?

街灯に照らされ一瞬弥代くんの顔が明るくなった。


…なんで。

弥代くんは私を見つめて、

今まで見たことないくらい苦しそうな顔をしている。


「仮にさ…もし仮に浅羽とは別の男…クラスのやつとか月雲くんとか、オレとか…に告白されたら、それは全部断る?」

「…うん。保留にしてることが第一優先だから、それ以外のことは考えられない。私の頭そんな器用じゃないし」

「そ。じゃあ結局…保泉さんの心を1番占めてるのって、今も昔も浅羽ってことだよな」

「そう、なるね」

「それってもうほとんど…」


好きって言ってるのと同じ。


弥代くんが小さな声でそう呟いた。

好き…か。

好き、なのかな。

好きって、何?

そこまで考えたことなくて、

でも特別でいたいって思っちゃってたってことは、

それとこれはイコールで…。


「私…昊くんのこと、好き、だった、の?」

「オレに聞かないでもらえる?けど、第三者視点だったら確実にそうだけど。オレだけじゃなくて、倉石も当の昔に勘づいてただろうし」


光莉ちゃんには私と昊くんが再会した時から、そう言われてた。

私が自分の気持ちを見えなくしてただけで、本当はずっと前からずっとずっと…好きだった、の?


「ま、待っててくれるって言うんならゆっくり確かめればいいんじゃない?その間に他の男に取られでもしたら目に当てらんないけど」

「いないよ、そんな人。昊くんだって、奇跡みたいなもんだし」

「…はぁ、にっぶ」

「え?」

「いや、何でもない。それより、着いたけど」

「あ」


見ると私の自宅から徒歩1分の公園のブランコが見えて来ていた。


「今日は送ってくれてありがとう」

「どういたしまして。…じゃ、また。お休み」

「うん、お休み」


私はパンパンになったいろんな感情を胸にパンパンに詰め込んだまま帰宅した。

部屋に戻ったら久しぶりに自分から昊くんに連絡しようと思って。


って、私…


「自然と昊くんって読んでた…」


私の呟きは虚空に溶けていったのだった。
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