空に吹く、風の音を教えて。
6.運命の聖夜
我が家にこたつが登場する。

それは本格的な冬の到来を意味する。


「風花ぁ、それ俺様が取っといたみかんだから!」

「しーらない。そんなに食べたかったら名前書いときなよね」

「はぁ?!なんだよ、それ!みかんに名前書くやつなんているかよ?!」


と、こたつに潜り込みながら颯太と喧嘩していると、母が洗い物を終え、テレビに1番近い定位置に腰を下ろした。


「みかんで喧嘩してるのは微笑ましいけど、お母さんはあなたたちの将来が心配です」

「大丈夫、大丈夫。俺様の実力なら真星くらい余裕で…」

「いくら颯太が天才とか神童とか言われてるとは分かってても、ギターにばっかりうつつ抜かして勉強机に向かってる姿を見てないと不安になるわ」

「いや、課題出てないし。真星対策本も今のところ9割当たってるし。余裕だって」

「でも颯太本番に弱いタイプだよね?ほら、小1のバイオリンコンクールでお腹壊してトイレから出て来れなくなってそのまま失格に…」

「うっさいなー!そうならないためにもギターやってんの!次のクリスマスライブはさ、俺様のソロもあるんだからな!よーく見とけよ!」

「え?クリスマスライブ?」

「もしかしてゆうくんから聞いてないの?」


私は大きくこっくり頷く。

母はなんのこっちゃとこっちには見向きもせず、今はもうテレビの向こうの俳優に夢中だ。


「ゆうくん俺様が言うと思って言わなかったのかな?」

「それはいいけど、クリスマスライブって何?私バイト入ってるから行けないよ」

「…え?」


なんで颯太がこんなに驚くんだろう?

だってそんなの分かりきってたことじゃん。

しかも12月に入ってすぐくらいに、今年は颯太は受験を控えてるし、私はバイトだからって家族でクリパは見送りにしようって話してたはずなのに。

さては聞いてなかったな。


「風花、絶対来て!何がなんでも来て!死んでも来て!分かった?!」

「なんで?」

「なんでって聞かれても俺様から言うわけには…。とにかく風花がいないと始まんないの!バイトさっさと切り上げて20時には駅前のライブハウス来てね!てか、光莉ちゃんには話行ってたはずなのに…。あぁ、なんでこんなうまく行かないんだ?!」


いつも完璧にやり遂げ、人生山しかない颯太には分からないよね。

伝わってるようで伝わってないことってあるんだよ。

私は身をもってそれを実感してるから分かる。

それにしても、24日どうしよう…。

ケーキ屋さんよりは混まないとしてもみんなスイーツ食べたがるからなぁ。

しかもクレープは花束みたいにラッピングすればオシャレでプレゼント向きだから意外に人気なんだよね。

遅れたら遅れたで仕方がないけど、なるべく早く帰れるように努力する。

うん、そうしよう。

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