空に吹く、風の音を教えて。
一応悠花さんには、30分くらい早く上がらせてもらえないか相談をしたけど、混み具合にもよると言われた。

私はそわそわしながら11時から19時までほぼ休憩なしで働いた。

悠花さんのお母様がピークタイムの15時にレジ専任の臨時で入ってくださったお陰でなんとか凌げた。

けど、そのお母様も帰宅してしまったものだから私は山のような注文をこなす悠花さんのサポートをしながら時計をたまに気にしていた。

しかし、あまりにも忙しすぎてライブのことなど途中から頭からすっかり消え去ってしまい、悠花さんから声がかかるまで一心不乱に仕事をこなしていた。


「風花ちゃん、もう大丈夫だよ!ほら、早く行って」

「えっ?あ、はいっ!」

「ギリ間に合うか間に合わないかって感じだけど、悠雅の勇姿見て来てあげて!」


戦場から行き着く間も無く私は聖夜に駆け出した。

山の方であるとはいえ、今年は例年より暖冬ということもあってホワイトクリスマスにはならなかった。

でもそのお陰で思いっきり走れる。

はず、なんだけど…


「はぁはぁはぁ…もう、無理…」


5分も経たないうちに足がもつれ、地面に倒れ込んだ。

一刻も早く行かなきゃって思うのに足が動かない。

立ち仕事にもちょっとは慣れたかなって思っていたのに。

やっぱ、まだまだだな、私…。

1日働いただけでヘロヘロになっちゃうくらいなんだから。

もっと、もっともっと頑張らなきゃ。

そのくらいしないと私になんか価値がない。

なんてネガティブな感情に支配されかけていると、ズボンのポケットに入れていたスマホが微動した。

何だろ?

こんな時に誰から?

私は悴んだ右手をポケットに突っ込み少し暖をとってから出した。

寒いからか、月末の速度制限のせいか、なんだかは分からないけどいつもより立ち上がりの遅いスマホにイラつきながらもなんとか復活したそれを凝視する。


「昊くん…」


そこには昊くんからのメッセージがあった。



クリスマスなのにお仕事だったんだよね?

お疲れ様

今日はクラスで仲の良いやつらとクリパしてた

でも、来年はほずみんと過ごしたいな、なんて笑

そういえば、お正月は何してる?

ほずみんが良ければ初詣一緒に行きたいんだけどいいかな?

今日はもう疲れたと思うからゆっくり休んで、
また余裕が出来た時に返事ください

待ってるから



私はよろよろと立ち上がった。

満身創痍の身体を必死に動かす。

私を労ってくれる人がいる。

私は1人じゃない。

私を大事に思ってこんな風にメッセージを送って来てくれる人がいるんだから、大丈夫なんだ。

まだ、行ける。

少し小走りになった。

遅れちゃうかもしれないけど、ちゃんと行くから。

颯太も弥代くんも会場をあっつあつにして待ってて。



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