空に吹く、風の音を教えて。
私は毎日、これまでのことを振り返っていた。

まずは昊くん。

小学生の頃に1番仲良かった男子。

私の無責任な発言で傷つけてしまったけど、それでも私をずっと想ってくれて、今も昔も太陽のように私を照らしてくれてる。

そして、弥代くん。

最初は嫌味いうし、揶揄ってくるし、ちょっととっつきにくい人だなぁって思っていたけど、本当は誰よりも嘘が嫌いで真正直な人。

確固たる自分があって、今の私のこともよく分かってていつも的確な助言をくれる。

この2人のうちどちらかを選ぶか。

どちらも選ばないのか。


「うわぁ、贅沢ぅ。こんなにチョコ使っちゃって良いの?」


光莉ちゃんが画面に向かってコメントしてる。

贅沢、か…。

私も、思い返せば十分贅沢だよね。

2人から告白されたこと。

どっちも優柔不断な私に何も言わないで待ってくれてること。

分布相応な悩み、なんだよね。


「倉石さんは相変わらず脳内丸出しの発言してるし。平和だね」

「あっ、弥代くん」


購買からお昼のパンを買って戻ってきた弥代くんが私たちの脇を通る。


「ウチの心の平和は理世くんと推しに守られてるから!この要塞は絶対に死守してみせる!」

「あっそ」

「何なの、相変わらずツンケンしちゃって。あ、さてはバレンタインチョコもらえない疑惑出て来て情緒不安定なんでしょ?可哀想だから本命チョコの余りで良ければウチ作ってあげるけど?」

「いらない。義理も友も。好きな人からの本命以外受け付けてないから」

「わーお。強気の発言。それを本人の前で言っちゃえるのがやしろんだよねー」


弥代くんがちらっと私に視線を流す。


「あんま根詰めんなよ」


それだけ言うとそそくさと自分の席に戻って行った。


「やしろん、ほんとは喉から手が出るほど欲しがってるんだろうなー、風ちんからのチ・ョ・コ・レ・イ・ト」


それは分かってる。

弥代くんの気持ちも十分理解してるつもり。

クリスマスイブに言われたこと、何度も思い出しては胸がちくっとなってるし。

あの日の弥代くんはいつもの弥代くんと違って、なんていうか…等身大の高校生って感じだった。

私と同じように弱いところもあるんだなって知って逆にもっと親近感が湧いた、というか…。

…そう、なんだ。

弥代くんとは異性の友達って感じ、なんだよね。

でも、昊くんは…。

近づきたくて遠ざかる星。

眩しい太陽。

温かくて優しいお日さま。

私の…憧れ。

私の、光。

昊くんのことを思い出しては胸を苦しめていた再会するまでの日々。

再会してから幾度となく同じ時間を過ごして新たに知った感情。

そのすべてを足してイコールで結んだら、答えは

恋、になるのかな?

恋、になってるのかな?

ふと、窓の外を眺める。

今頃昊くんは何をしてるんだろう?

私たちと同じように休み時間かな?

それともまだ授業やってるのかな?

同じ学校だったら、

同じクラスだったら、

すぐに答え合わせ出来たのに…。

この距離がもどかしくて、

胸がズキンと痛む。


会いたい、な。

話したい、な。


もっと近くにいて、

もっともっと感じていたい。

もっともっと知りたい。


「あ…」


ベランダの柵で休んでいた鳥が一羽飛んでいった。

それを見てもう一羽も飛び立つ。


…そっか。


そういう、ことか。

これが、

この気持ちが…。


「ねぇ、風ちん。こっちのマカロンとこっちのガトーショコラどっちが良いと思う?」

「え?あ…」


光莉ちゃんの話は左から右に流れて行っていたけど、私の口は無意識のうちに動いていた。


「好きな人からもらったものならどっちでもいいんだよ、きっと。無理しないでうまく作れる自信がある方を選んでみてもいいんじゃないかな?」


こんな風にあの人なら言ってあげるんじゃないかと思った。


「確かしぃ。んじゃ、マカロンはやめてガトーショコラにしよっと。マカロンむっじーからねぇ。来年また頑張るっちゅうことで」

「うん。がんばれ、光莉ちゃん」

「んふふーん。風ちんもね」


うん。

今なら頑張れる気がする。

私も作るよ。

最高のバレンタインにするために。

本命チョコをトッピングした

世界にひとつだけのブーケクレープを。

ようやく私の心が決まった。
< 76 / 82 >

この作品をシェア

pagetop