空に吹く、風の音を教えて。
私と昊くんは昊くん行きつけのカフェに移動した。
もちろん、光莉ちゃんたちとは違う、ちょっと学校から離れたところで。
昊くんは何回も寒い中待たせてごめんねって言ってくれたけど、私はその度に全然平気と答えた。
実際は寒くて凍え死んじゃうんじゃないかなんて思ってたけど。
それは自業自得だし、好きでやったことなんだからへっちゃらって笑ってないとおかしいよね。
でも寒かったのは確かなので、昼にもらったココアが口の中に居座り続けててどうにもこうにもココアの口だったから私はココアを注文した。
「寒いと飲みたくなるよね、ココア。俺もそれにしよっと。すみませーん!注文お願いします!」
「はーい!」
昊くんがココアを2つ注文してくれた。
5分も待たないうちにココアが2つ運ばれてきて、私たちはそれぞれ口にする。
「美味しい…」
「よかった。ここのはね何頼んでも美味しいんだよ」
「そうなんだ」
と、ここで会話が途切れる。
絶対私から切り出さなきゃならないんだけど、ほかのお客さんの目を気にしてしまってなかなか口を開けない。
幸いにも真星の生徒さんはいなさそうだから、そこは心配しなくていいけど。
でも…。
うぅ、空気が重い。
せっかく弱虫を追い出せそうだったのに、ここにきて引き返してくる。
それで何回かココアを口に含んでは精神統一を図っていると、代わりに昊くんが話し出した。
「あのさ、今日って何日だっけ?」
「え、あ…2月14日、バレン、タインデー…」
「そんな大事な日に、俺に会いに来てくれたってこと?」
「うん…」
「…ありがとう。遠いのにわざわざ来てくれて。で、せっかく来てくれたから…俺からもう一度言わせてね」
私はマグカップから手を離し、目の前の昊くんの澄み切った瞳を見つめた。
その瞳に今は私しか映っていない。
「俺、やっぱりほずみんが好きだよ。一生懸命なほずみんも、ちょっと抜けてるところあるのも、全部…全部俺にとっては愛しくて仕方ない。これからも一緒にいたい。そう、ずっと、強く思ってる」
真っすぐすぎるくらいの言葉を真正面から浴びて、私の気持ちは固まった。
最後の1ピースがぴたりとはまって、言葉になる。
「昊くん」
「うん」
優しくて穏やかなまなざしでこっちを見つめてくれてる。
大丈夫。
今の私なら。
伝えられる。
「これ、作ったんだ」
「え?ほずみん手作り?」
「うん。教わりながらだけど、ちゃんと自分でデザインから考えて試作した」
「中、見てもいい?」
私は大きく頷いた。
「わあ!すごい!花束みたい」
「食べられる花束だよ。昊くんがおいしく食べてくれることを願いながら作ったんだ。こんなに何かに、誰かのために一生懸命になったことたかった。これが初めて。…初めての本命チョコ、です」
「え?」
昊くんが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
そんな驚く顔も見てみたかったんだ。
というより、
私はキミの
いろんな顔が見たい。
どんなことにどんな表情をするのか、
キミの隣で見ていたい。
そう、強く思ったんだ。
それって、もう…
「好き、です。私も昊くんのことが好き」
そう口にした瞬間パンっと胸の中の風船がはじけ飛ぶような音が聞こえた。
風船の中にたまり続けていた負の感情が雲散霧消した。
私、やっと、
やっと、言えたんだ。
自分の本当の気持ち。
見つけた。
伝えられた。
ほんと…嬉しい。
「その言葉、ずっと待ってたよ。ほずみん…いや、風花ちゃん。俺のこと好きになってくれて、本当にありがとう。俺と付き合ってくれますか?」
「…はいっ」
と、私が言うと店の奥から拍手が聞こえてきた。
「え?」
「て、店長?!」
昊くんも驚いて今にも椅子から転げ落ちそうになっている。
顎にひげを蓄えた60代ぐらいの少し背中が丸まったおじいさんがこっちに向かって歩いてくる。
「カップル成立おめでとう!」
店長がそう言うと、商談をしていたサラリーマンも親子連れも仲良し老夫婦も、店にいた全員が拍手してくれた。
正直顔から火が出そうなほど恥ずかしいけど、
それよりも、
嬉しい、な。
胸いっぱいに幸せがあふれているこの感じがたまらなく愛しく尊い。
「店長、あの…カノジョが作ってきてくれたクレープここで食べても…」
「もちろん、オッケーだよ」
「じゃあ、遠慮なく。あ、よいこは真似しちゃダメだよ」
窓際の席でチョコパフェを食べていた幼稚園生くらいの男の子が、元気にはーいと返事をする。
その返事を聞き終えてから、昊くんはクレープにかぶりついた。
「うん、美味しい!世界一いや宇宙一美味しいです!」
「もっと良い食レポせんかい!ねえ、カノジョさん?」
「えっ、あっ…えっとぉ」
と私が困って視線を右往左往させていると思わぬところから助け舟が流れてきた。
「ちょっとお父さん!だべってないで注文いっぱい入ってんだからちゃっちゃと作っちゃってよ!」
さっきココアを運んでくれたお姉さんが店長を厨房へと連れ帰った。
「あはは!なんか賑やかなバレンタインになっちゃったね」
「うん。でも、嬉しいよ。新たな門出っていうのも変だけど、そんなタイミングを周りの人たちにも祝福してもらえて」
「だね」
私たちは顔を見合わせて笑いあった。
あの日あんな別れ方をして、
私がふがいなくて振り回してしまったけど、
今日こうして新しい関係をスタートできて本当によかった。
これからもずっと、
キミの隣で
笑っていよう。
そう、心に誓った。
もちろん、光莉ちゃんたちとは違う、ちょっと学校から離れたところで。
昊くんは何回も寒い中待たせてごめんねって言ってくれたけど、私はその度に全然平気と答えた。
実際は寒くて凍え死んじゃうんじゃないかなんて思ってたけど。
それは自業自得だし、好きでやったことなんだからへっちゃらって笑ってないとおかしいよね。
でも寒かったのは確かなので、昼にもらったココアが口の中に居座り続けててどうにもこうにもココアの口だったから私はココアを注文した。
「寒いと飲みたくなるよね、ココア。俺もそれにしよっと。すみませーん!注文お願いします!」
「はーい!」
昊くんがココアを2つ注文してくれた。
5分も待たないうちにココアが2つ運ばれてきて、私たちはそれぞれ口にする。
「美味しい…」
「よかった。ここのはね何頼んでも美味しいんだよ」
「そうなんだ」
と、ここで会話が途切れる。
絶対私から切り出さなきゃならないんだけど、ほかのお客さんの目を気にしてしまってなかなか口を開けない。
幸いにも真星の生徒さんはいなさそうだから、そこは心配しなくていいけど。
でも…。
うぅ、空気が重い。
せっかく弱虫を追い出せそうだったのに、ここにきて引き返してくる。
それで何回かココアを口に含んでは精神統一を図っていると、代わりに昊くんが話し出した。
「あのさ、今日って何日だっけ?」
「え、あ…2月14日、バレン、タインデー…」
「そんな大事な日に、俺に会いに来てくれたってこと?」
「うん…」
「…ありがとう。遠いのにわざわざ来てくれて。で、せっかく来てくれたから…俺からもう一度言わせてね」
私はマグカップから手を離し、目の前の昊くんの澄み切った瞳を見つめた。
その瞳に今は私しか映っていない。
「俺、やっぱりほずみんが好きだよ。一生懸命なほずみんも、ちょっと抜けてるところあるのも、全部…全部俺にとっては愛しくて仕方ない。これからも一緒にいたい。そう、ずっと、強く思ってる」
真っすぐすぎるくらいの言葉を真正面から浴びて、私の気持ちは固まった。
最後の1ピースがぴたりとはまって、言葉になる。
「昊くん」
「うん」
優しくて穏やかなまなざしでこっちを見つめてくれてる。
大丈夫。
今の私なら。
伝えられる。
「これ、作ったんだ」
「え?ほずみん手作り?」
「うん。教わりながらだけど、ちゃんと自分でデザインから考えて試作した」
「中、見てもいい?」
私は大きく頷いた。
「わあ!すごい!花束みたい」
「食べられる花束だよ。昊くんがおいしく食べてくれることを願いながら作ったんだ。こんなに何かに、誰かのために一生懸命になったことたかった。これが初めて。…初めての本命チョコ、です」
「え?」
昊くんが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
そんな驚く顔も見てみたかったんだ。
というより、
私はキミの
いろんな顔が見たい。
どんなことにどんな表情をするのか、
キミの隣で見ていたい。
そう、強く思ったんだ。
それって、もう…
「好き、です。私も昊くんのことが好き」
そう口にした瞬間パンっと胸の中の風船がはじけ飛ぶような音が聞こえた。
風船の中にたまり続けていた負の感情が雲散霧消した。
私、やっと、
やっと、言えたんだ。
自分の本当の気持ち。
見つけた。
伝えられた。
ほんと…嬉しい。
「その言葉、ずっと待ってたよ。ほずみん…いや、風花ちゃん。俺のこと好きになってくれて、本当にありがとう。俺と付き合ってくれますか?」
「…はいっ」
と、私が言うと店の奥から拍手が聞こえてきた。
「え?」
「て、店長?!」
昊くんも驚いて今にも椅子から転げ落ちそうになっている。
顎にひげを蓄えた60代ぐらいの少し背中が丸まったおじいさんがこっちに向かって歩いてくる。
「カップル成立おめでとう!」
店長がそう言うと、商談をしていたサラリーマンも親子連れも仲良し老夫婦も、店にいた全員が拍手してくれた。
正直顔から火が出そうなほど恥ずかしいけど、
それよりも、
嬉しい、な。
胸いっぱいに幸せがあふれているこの感じがたまらなく愛しく尊い。
「店長、あの…カノジョが作ってきてくれたクレープここで食べても…」
「もちろん、オッケーだよ」
「じゃあ、遠慮なく。あ、よいこは真似しちゃダメだよ」
窓際の席でチョコパフェを食べていた幼稚園生くらいの男の子が、元気にはーいと返事をする。
その返事を聞き終えてから、昊くんはクレープにかぶりついた。
「うん、美味しい!世界一いや宇宙一美味しいです!」
「もっと良い食レポせんかい!ねえ、カノジョさん?」
「えっ、あっ…えっとぉ」
と私が困って視線を右往左往させていると思わぬところから助け舟が流れてきた。
「ちょっとお父さん!だべってないで注文いっぱい入ってんだからちゃっちゃと作っちゃってよ!」
さっきココアを運んでくれたお姉さんが店長を厨房へと連れ帰った。
「あはは!なんか賑やかなバレンタインになっちゃったね」
「うん。でも、嬉しいよ。新たな門出っていうのも変だけど、そんなタイミングを周りの人たちにも祝福してもらえて」
「だね」
私たちは顔を見合わせて笑いあった。
あの日あんな別れ方をして、
私がふがいなくて振り回してしまったけど、
今日こうして新しい関係をスタートできて本当によかった。
これからもずっと、
キミの隣で
笑っていよう。
そう、心に誓った。