記憶障害の男と写真家の恋♡消せない過去
転んだ痛みと、隠し事のはじまり
「コケて、足が痛い……」
「大丈夫ですか、ふみさん。すぐ病院へ行きましょう」
愛斗はふみを抱き上げ、お姫様抱っこで支えた。
「貞夫さん、行きましょうか」
「俺は行かない」
「どうしてですか?」
「ふみを病院へ連れて行ってくれ。だが今日、どうしても運ばなければならない荷物があるんだ。頼む、理由は後で話す」
「わかりました。では貞夫さんは荷物の運搬をお願いします。俺がふみさんを病院へ連れて行きます」
「ありがとう」
「はい」
愛斗はふみを抱えたまま病院へ向かい、診察を受けさせた。
診察が終わり、ふみと愛斗は家へ戻る。
愛斗はふみを介助しながら椅子へと座らせてやる。
「ありがとう、愛斗くん。お父さんは?」
「あ、貞夫さんは仕事に行きました。急用が入ったようですよ」
「そう……」
愛斗はバッグから包みを取り出し、ふみへ差し出した。
「はい、これ」
「あ、これって期間限定のスイーツじゃない?」
「はい。ふみさんに食べてもらいたくて、買っておいたんです」
「ありがとう」
ふみはスプーンを口へ運び、ふわりと笑う。
「おいしい」
「よかったです」
愛斗はふみといろいろ話をし、そろそろ帰ろうと立ち上がった――そのとき、ふみが彼を呼び止めた。
「もう少しいてくれない? パパが帰ってくるまで……」
「はい、もちろん」
実は愛斗は、十年前からふみに片思いをしていた。
こうして二人きりでいられる時間が、何より嬉しかった。
――翌朝、工場へ出勤した愛斗のもとへ、貞夫が近づいてくる。
「昨日は、本当にありがとうな」
「いいんですよ。お気になさらず」
「……頼みがある。昨日のこと、誰にも言わないと約束してくれるか」
「はい、もちろんです」
貞夫は声を落とし、続けた。
「俺があの日運んでいた荷物……あれは鉄砲なんだ」
「え――鉄砲ですか?」
「ふみの手術代に大金が必要だった。ヤクザへ鉄砲を渡せばまとまった金が入る。だから俺は密造したんだ。いつ警察に捕まるかわからない。だから、もしそうなったときは……ふみを頼む」
「貞夫さん、これから出頭するつもりなんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「そんな……そうしたらふみさんは? この工場はどうなるんですか? あなたが工場長で、ふみさんの父親なんでしょう?」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「……黙っている、という手もあります」
愛斗が貞夫へ、こっそりと考えを話し始めた、そのとき――
同じ工場で働く真と稔の父・掬太郎が、陰からその言葉を聞いてしまった。
掬太郎は驚き、すぐに携帯電話を取り警察へ通報しようとした。
「ま、待ってください!」
制止も間に合わず、愛斗は慌てて掬太郎を突き飛ばした。
「つんっ」
掬太郎はよろめき、勢いよく頭を機械の角へ打ちつけ、その場に崩れ落ちた。
「掬太郎さん! 掬太郎さん!」
呼びかけても返事はない。頭からは鮮血が流れ、体は動かない。
愛斗は青ざめ、貞夫も凍りついた――そこへ、ふみが駆けつけた。
「愛斗くん! お父さん! 掬太郎さん、どうしたの? 頭から血が出てるじゃない!」
「……俺が、やりました」
「どうして?」
「ムカついたから……つい、手が出たんです」
「え? 意味わかんないよ。ちゃんと説明してよ」
沈黙のあと、貞夫がすべてを打ち明けた。
「……俺のせいなんだ。全部、俺が始めたことだ」
ふみは二人の手を、そっと両手で包み込んだ。
「大丈夫よ。このまま隠していれば、誰にもわからないから……」
「ふみさん……」
三人は顔を見合わせ、言葉を選びながら、これからのことを話し合い始めた。
「コケて、足が痛い……」
「大丈夫ですか、ふみさん。すぐ病院へ行きましょう」
愛斗はふみを抱き上げ、お姫様抱っこで支えた。
「貞夫さん、行きましょうか」
「俺は行かない」
「どうしてですか?」
「ふみを病院へ連れて行ってくれ。だが今日、どうしても運ばなければならない荷物があるんだ。頼む、理由は後で話す」
「わかりました。では貞夫さんは荷物の運搬をお願いします。俺がふみさんを病院へ連れて行きます」
「ありがとう」
「はい」
愛斗はふみを抱えたまま病院へ向かい、診察を受けさせた。
診察が終わり、ふみと愛斗は家へ戻る。
愛斗はふみを介助しながら椅子へと座らせてやる。
「ありがとう、愛斗くん。お父さんは?」
「あ、貞夫さんは仕事に行きました。急用が入ったようですよ」
「そう……」
愛斗はバッグから包みを取り出し、ふみへ差し出した。
「はい、これ」
「あ、これって期間限定のスイーツじゃない?」
「はい。ふみさんに食べてもらいたくて、買っておいたんです」
「ありがとう」
ふみはスプーンを口へ運び、ふわりと笑う。
「おいしい」
「よかったです」
愛斗はふみといろいろ話をし、そろそろ帰ろうと立ち上がった――そのとき、ふみが彼を呼び止めた。
「もう少しいてくれない? パパが帰ってくるまで……」
「はい、もちろん」
実は愛斗は、十年前からふみに片思いをしていた。
こうして二人きりでいられる時間が、何より嬉しかった。
――翌朝、工場へ出勤した愛斗のもとへ、貞夫が近づいてくる。
「昨日は、本当にありがとうな」
「いいんですよ。お気になさらず」
「……頼みがある。昨日のこと、誰にも言わないと約束してくれるか」
「はい、もちろんです」
貞夫は声を落とし、続けた。
「俺があの日運んでいた荷物……あれは鉄砲なんだ」
「え――鉄砲ですか?」
「ふみの手術代に大金が必要だった。ヤクザへ鉄砲を渡せばまとまった金が入る。だから俺は密造したんだ。いつ警察に捕まるかわからない。だから、もしそうなったときは……ふみを頼む」
「貞夫さん、これから出頭するつもりなんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「そんな……そうしたらふみさんは? この工場はどうなるんですか? あなたが工場長で、ふみさんの父親なんでしょう?」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「……黙っている、という手もあります」
愛斗が貞夫へ、こっそりと考えを話し始めた、そのとき――
同じ工場で働く真と稔の父・掬太郎が、陰からその言葉を聞いてしまった。
掬太郎は驚き、すぐに携帯電話を取り警察へ通報しようとした。
「ま、待ってください!」
制止も間に合わず、愛斗は慌てて掬太郎を突き飛ばした。
「つんっ」
掬太郎はよろめき、勢いよく頭を機械の角へ打ちつけ、その場に崩れ落ちた。
「掬太郎さん! 掬太郎さん!」
呼びかけても返事はない。頭からは鮮血が流れ、体は動かない。
愛斗は青ざめ、貞夫も凍りついた――そこへ、ふみが駆けつけた。
「愛斗くん! お父さん! 掬太郎さん、どうしたの? 頭から血が出てるじゃない!」
「……俺が、やりました」
「どうして?」
「ムカついたから……つい、手が出たんです」
「え? 意味わかんないよ。ちゃんと説明してよ」
沈黙のあと、貞夫がすべてを打ち明けた。
「……俺のせいなんだ。全部、俺が始めたことだ」
ふみは二人の手を、そっと両手で包み込んだ。
「大丈夫よ。このまま隠していれば、誰にもわからないから……」
「ふみさん……」
三人は顔を見合わせ、言葉を選びながら、これからのことを話し合い始めた。