記憶障害の男と写真家の恋♡消せない過去
食事を選んで済ませてから、二時間が過ぎた。
二人は駐車場へ戻り、車に乗り込むと、自然に唇を重ねた。
「ふみ、あの写真、俺に送ってくれないか」
「え、あんなのが欲しいの?」
「あとで話すから、いいだろ」
「わかった」
それから二人は近くのコンビニへ立ち寄った。ふみが買い物をしている間、愛斗は端末を操作して写真を複製していた。
「愛斗くん、何してるの?」
「複製だよ」
愛斗はデータを保存し、バッグに収める。
「見せてよ」
「あとでな」
「わかった」
写真の準備を済ませ、家へと帰り着く。
玄関をくぐるなり、再び柔らかく口づけ合った。
愛斗がスマホの画面を差し出す。そこには、幸輝がブラジャーを頭にかぶっている写真が映っていた。
「あ、愛斗くんに送ったやつだ。どうやって写真にしたの?」
愛斗はスマホから直接プリントアウトできることを説明し、続けてこの写真を使って幸輝をからかう、というか、懲らしめる方法をふみに教えた。
「それいいね、やろうよ」
「うん」
二人は光行の悪口まじりに笑い合っていると、ふみのスマホが鳴った。稔からの電話だった。
ふみは受話器を取り、短いやり取りの後、電話を切ろうとした――そのとき、稔の声が切迫して届いた。
「もっちゃんが…もっちゃんが死んだんだ。自殺したんだ」
「え?」
「明日、そっちへ行く」
ふみは真斗にも伝え、貞夫にも知らせた。それから愛斗たちは慌ただしく荷物をまとめ、山道へと逃れた。
それから一か月の月日が流れた。
ふみが買い物を済ませ、部屋に入ろうとすると、そこには貞夫と稔が立っていた。
「どうしてここが…」
「話を聞きに来ました。今日は逃がしませんよ」
ふみは反射的にドアを閉めようとしたが、間に合わなかった。仕方なく真斗と稔を部屋へ招き入れる。
「あんただろ、もっちゃんを自殺に追い込んだのは。返してよ、全部」
「私は何もしてない」
「ふみ、この人は誰だ?」
「お客さんよ」
「お前、とぼけるなよ、くそっ!」
稔は突然、真斗の胸ぐらを掴み上げた。
「やめて!」ふみは泣きながら二人の間に割って入り、引き離そうとする。
「わからないの? あなたたちのことも、復讐する意味も、何もかもわからないの。私、記憶障害なの」
「は? 記憶障害? 嘘つくなよ。あんたのことは覚えてるだろ? 毎日エッチしようとか、色々言ってたじゃん。病気のふりをしてるだけだろ!」
「私のことは覚えてる。でも昔のことは思い出せないの」
「じゃあなんで、もっちゃんを脅したんだ? 雑誌に落書きしたり、嫌がらせしただろう!」
「あれは…むかついたから」
「ムカついたら何でもしていいのか? やっていいことと悪いことがあるだろ!」
「貞夫さんがこの鉄砲を作ったんだろ?」
「なんでそれをあなたたちが持ってるの? もっちゃんに盗むようにお願いしたのに」
ふみは棚の奥から、鉄砲を取り出して見せた。
「言ったはずだ、これは偽物だ。今、盗んだと言ったよな?」
「騙したのか!」
「鉄砲を密造したんだろ? 自分のしたことを認めろよ! 誰が母さんと父ちゃんを殺したんだ? 工場に行ったきり、帰ってこなかったじゃないか!」
ふみは突然、声を上げて大きく笑い出した。
「何がおかしいんだよ、てめえ!」
「全部、真斗くんのためなの。愛してたから、罪を着せたくなかったの」
「だからもっちゃんを利用したのか?」
< 14 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop