記憶障害の男と写真家の恋♡消せない過去
幸輝とカルは、ふみの家を後にした。
外に出てから愛斗と話をする。
「何、心配いらないよ。私に任せておいて」
「ふみ、ありがとう」
愛斗がふみと話していると、ちょうど貞夫がデイサービスから帰ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「ただいま」
「お父さん、これから買い物に行ってくるから、留守番しててね」
「うん、わかった」
愛斗はふみと一緒に近くの店へ向かった。
買い物を済ませた帰り道、ふと立ち止まった愛斗が、そっと唇を重ねてきた。
家に戻るとふみは夕食の支度を始め、包丁や鍋を動かす背中に愛斗が後ろから腕を回して抱きしめる。
二人は再び口づけを交わし、それからふみは再び料理に集中した。
愛斗はスマホを取り出し、動画配信サイトを眺めているうちに、やがて焼きそばのいい香りが台所に広がった。
「できたわよ」
三人が食卓につき、「いただきます」と手を合わせる。
湯気の立つ焼きそばを口に運ぶと、愛斗が目を細める。
「ふみの焼きそば、うまい。最高だよ」
「ありがとう」
食事をしながら他愛もない話を重ね、それぞれが風呂に入り、夜は静かに更けていった。
翌朝、目覚めて朝食を済ませ、仕事の準備をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
扉を開けると、そこには幸輝が立っていた。
ふみは彼をリビングへ招き入れる。
「こんな朝早くからどうしたの? 何か飲む? 汗をかいてるわよ」
台所へ向かおうとするふみを、幸輝の声が引き留めた。
「やっぱり俺には無理です。子供の頃から知っていて、二人は俺のことを信用してくれているのに……どうしてもできません」
「俺たちはあいつらがお腹にいるときから知ってるんだ。俺たちはどうなってもいいっていうのか?」
「いや、それは……」
その言葉を遮るように、貞夫が低く強い声を放つ。
「もういい」
貞夫に厳しく叱られた幸輝は、体を震わせながら涙をこぼした。
そのまま貞夫は扉を強く叩くようにして部屋を出ていく。
場の空気が重く沈みかけたとき、ふみが柔らかい声を出した。
「そうだ、この前ね、新しいカメラで試し撮りをしたの。見て、カルさん、いい笑顔でしょ。もっちゃんも、みんなが幸せになるためなのよ。これ、あげるから持って帰って」
ふみはカルが写った写真を手渡す。
だがその裏には、小さく「人質にするぞ」と書かれていた。
幸輝は写真を握り締め、静かに家を後にした。
貞夫の怒鳴り声に愛斗が怯えているのを見て、ふみはすぐに彼の手を取り、胸に抱き寄せる。
「驚いたわよね、ごめんなさい。あの人が言うことを聞かなかったから、ああなったの」
愛斗の呼吸が落ち着くのを待って、そっと口づける。
二人は気持ちを整えてから、それぞれの仕事へ向かった。
日が暮れて夜になると、ふみはもっちゃんが働く中華料理店を訪れた。
カウンターに腰を下ろし、静かに問いかける。
「証拠は持ってきてくれたわね?」
「探してはみました」
「なら、見せてちょうだい」
もっちゃんは少し間を置いて、ゆっくりと答えた。
「……ありませんでした」
「そう」
「ええ。だから、心配する必要は何もないんですよ」
ふみは口元に笑みを浮かべたが、その瞳には感情が宿らない。
冷めた響きで続ける。
「どうしても、あの兄弟を守りたいのね。ふっ……ならかるさんを首にしてもいいの?」
「やめてください」
「じゃあ、代わりにあなたが言うとおりに動くのね?」
「……はい」
外に出てから愛斗と話をする。
「何、心配いらないよ。私に任せておいて」
「ふみ、ありがとう」
愛斗がふみと話していると、ちょうど貞夫がデイサービスから帰ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「ただいま」
「お父さん、これから買い物に行ってくるから、留守番しててね」
「うん、わかった」
愛斗はふみと一緒に近くの店へ向かった。
買い物を済ませた帰り道、ふと立ち止まった愛斗が、そっと唇を重ねてきた。
家に戻るとふみは夕食の支度を始め、包丁や鍋を動かす背中に愛斗が後ろから腕を回して抱きしめる。
二人は再び口づけを交わし、それからふみは再び料理に集中した。
愛斗はスマホを取り出し、動画配信サイトを眺めているうちに、やがて焼きそばのいい香りが台所に広がった。
「できたわよ」
三人が食卓につき、「いただきます」と手を合わせる。
湯気の立つ焼きそばを口に運ぶと、愛斗が目を細める。
「ふみの焼きそば、うまい。最高だよ」
「ありがとう」
食事をしながら他愛もない話を重ね、それぞれが風呂に入り、夜は静かに更けていった。
翌朝、目覚めて朝食を済ませ、仕事の準備をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
扉を開けると、そこには幸輝が立っていた。
ふみは彼をリビングへ招き入れる。
「こんな朝早くからどうしたの? 何か飲む? 汗をかいてるわよ」
台所へ向かおうとするふみを、幸輝の声が引き留めた。
「やっぱり俺には無理です。子供の頃から知っていて、二人は俺のことを信用してくれているのに……どうしてもできません」
「俺たちはあいつらがお腹にいるときから知ってるんだ。俺たちはどうなってもいいっていうのか?」
「いや、それは……」
その言葉を遮るように、貞夫が低く強い声を放つ。
「もういい」
貞夫に厳しく叱られた幸輝は、体を震わせながら涙をこぼした。
そのまま貞夫は扉を強く叩くようにして部屋を出ていく。
場の空気が重く沈みかけたとき、ふみが柔らかい声を出した。
「そうだ、この前ね、新しいカメラで試し撮りをしたの。見て、カルさん、いい笑顔でしょ。もっちゃんも、みんなが幸せになるためなのよ。これ、あげるから持って帰って」
ふみはカルが写った写真を手渡す。
だがその裏には、小さく「人質にするぞ」と書かれていた。
幸輝は写真を握り締め、静かに家を後にした。
貞夫の怒鳴り声に愛斗が怯えているのを見て、ふみはすぐに彼の手を取り、胸に抱き寄せる。
「驚いたわよね、ごめんなさい。あの人が言うことを聞かなかったから、ああなったの」
愛斗の呼吸が落ち着くのを待って、そっと口づける。
二人は気持ちを整えてから、それぞれの仕事へ向かった。
日が暮れて夜になると、ふみはもっちゃんが働く中華料理店を訪れた。
カウンターに腰を下ろし、静かに問いかける。
「証拠は持ってきてくれたわね?」
「探してはみました」
「なら、見せてちょうだい」
もっちゃんは少し間を置いて、ゆっくりと答えた。
「……ありませんでした」
「そう」
「ええ。だから、心配する必要は何もないんですよ」
ふみは口元に笑みを浮かべたが、その瞳には感情が宿らない。
冷めた響きで続ける。
「どうしても、あの兄弟を守りたいのね。ふっ……ならかるさんを首にしてもいいの?」
「やめてください」
「じゃあ、代わりにあなたが言うとおりに動くのね?」
「……はい」