終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「仕事行きたくねぇ」
「まだ言ってる……」   
「とはいえ、責任者が行かねぇとだしな」   

つい先程、大垣さんから呼び出しがあり、急遽仕事になった綾人。 
行きたくないとゴネ倒していたが、さすがに肩書き持ちはそうもいかない。

「お前も来い」
「は?なんで?」
「仕事じゃゆっくりホテルの中、見れないだろ」
「まぁ……そうだけど」

とは言っても、あたしの担当は細かい調整くらいだ。
何かやることがあったか?と考えていると、腕を引かれて胸の中に閉じ込められた。
  
「付き合った初日に仕事なんて野暮だろ」
「え?……そうだけど、社会人だしね?」
「俺の彼女は聞き分け良いんだなぁ」
「ちょっと……くすぐったいっ」

綾人の指が、あたしの髪をかき分け耳をくすぐる。

「ま、俺が待っててほしいだけだ」

(なにそれ……ほんと、そういうとこずるいっ)

「…………終わったら、デートしたい」
「決まりだな。支度してこい」
      
綾人が口元を押えているけど、ニヤニヤしているのがわかる。 
あたしは一度抱きついて、頭をぐりぐりしてからそっと離れた。  

急いで着替えて、玄関で待ってる綾人のところへ向かった。
綾人が「それ」と、あたしの左手首を指差す。 

「付け替えたのか」
「うん、日常ならこっちのほうがいい」          
「そうだな、逃げらんねぇもんな」             
「……捕まってあげたのよっ」
「違いねぇな」         

綾人が軽く頬に口づけし、手を繋ぐ。
ほんの少しだけ、あたしは恥ずかしさを隠すように指を絡めた。 
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