終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
日付をまたいだ頃、玄関ドアの施錠音が聞こえてきた。
  
「まだ起きてたのか」                   
「おかえり、お疲れさま」

着崩したワイシャツからほのかに香る汗と香水とお酒。
そしていつもより少し気疲れした顔。
靴を脱いだ綾人を労うように、ぎゅっと抱きしめる。

「寂しかったのか?」
「うん……綾人もでしょ」
「素直だな」
「まぁ……たまにはね。お風呂入っておいでよ」

綾人は返事しながら、あたしを抱き抱えた。

「……え?」
「風呂、付き合えよ」
「ちょ……っ!!」   

抵抗も虚しく、そのまま一緒に湯船に浸かる。
浴室の明かりを消してもらったものの、夜景の煌めきが水面に反射している。
酔っているからか、ご機嫌なのか、珍しく鼻歌を歌っている。
  
「なんか良いことあった?」
「まぁな。麗華の親父さんにも会って、志穂のこと伝えといた」
「えっ……?まさか……」
「そう、婚約者の話。麗華も自分の両親とクソ親父に『志穂さんは素敵な女性だ』って」
「麗華さん・・・・・・」

いつか麗華さんともっと仲良く話せる日が来るかもしれない。
そんな未来の楽しみが一つ増え、胸の奥がじんわりあたたかくなる。

「あいつが認めたんだ。それで充分だろ」
「そうだね」
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